相場師が語る、実践的予測手法「中源線建玉法」の確立

今回は、「中源線建玉法」について語ります。※本連載では、投資顧問会社「林投資研究所」代表取締役 林知之氏の著書『億トレⅢ プロ投資家のアタマの中』(マイルストーンズ)から一部を抜粋し、相場師として大きな成功を収めた林輝太郎氏が歩んだ歴史と、売買の秘訣などについて、インタビュー形式で紹介していきます。

「絵に描いたような必勝法」ではなかったが・・・

前回からの続きです)

 

─中源線建玉法(ちゅうげんせんたてぎょくほう)には、相場の基本となる要素がわかりやすく盛り込まれていると思うんだけど、そもそも何がきっかけで手がけたの?

 

中源線を書籍としてまとめたのは林投資研究所を設立したあとだが、商品会社のヤマハ通商を経営していたころに研究を始めていたんだ。

 

いつの時代でも同じようなものがあるが、その当時も「相場の必勝法」を売る詐欺行為が流行したんだよ。そして、たまたまオレのお客さんが引っかかり、相手を告訴する騒ぎになった。実は、その事件がきっかけだったんだ。

 

”絵に描いたような”必勝法なんてあるわけがない。でも、必勝法に近づくというか、数式的な要素を取り入れるというか、とにかく感覚による売買とは違うものを研究してみようという話が、業界で親しかった人たちの間で持ち上がり、いろいろと調べ始めたんだ。現在のシステム売買と発想は全く同じなんだろうな。

 

─相場の必勝法は当然、大昔から研究されていたんだよね?

 

そうだな。コンピュータが身近ではなかった当時でも、「必勝法」とうたわれるものがいろいろあった。だから、オレが数人の仲間と一緒に行った研究、中源線の完成につながる研究の初期でも、ちまたにある予測法、既存の機械的売買法を探すことから始めたよ。

 

ところが、なんだかインチキくさいものばかりでなあ。とにかく、「これはいい」と思えるものが見つからないんだ。ひとつの完成品として世間に公表しているものなのに、無理やり”当てよう”としていて実用性に欠けているものがあったし、最初から人をだまそうとしているようなものも多かった。

 

そういったヒドいものを除いても、”必勝法”という夢をムリに追いかけて中途半端に終わっているようなものばかりだった。実践的な観点が欠けているんだよ。

 

─中源線のもととなる記録は、どうやって見つけたの?

 

まず、いろいろと調べているうちに、中源線の伝説を聞いた。それ自体が怪しげだったわけだが、「すごいらしい」というので調査を続けた。すると、いろいろな情報が集まったんだ。

 

しかし、それこそ「中源線」という名前だけで、どこかの誰かが無責任に創作したようなものがゴロゴロあって・・・続けるうちに、どうやら本物らしいというものにたどり着いたんだが、それも断片的な記録だけで、それでさえも怪しげだった。

 

まあ、とにかく”それらしい”ものを見つけた。単なる予測法ではなく、「建玉法」としての要素をもつ、正しい考え方が紹介されている資料に出会ったわけだ。研究の対象として十分な実践的な内容を含んでいると判断し、それを突破口にして調査・研究を進めていった。

 

最終的には、足りない部分を自分たちで考えた。その過程では、膨大な過去データを検証したし、いろいろな観点から議論を繰り返したね。そして完成したのが、現在の『中源線建玉法』だ。

機械判断と人間の感覚…最後に決めるのは「自分」⁉

─中源線の長所は、「常に同じ基準が維持されること」と「手仕舞いの指示がある」ことだと思うんだよね。

 

使っている人の相場観とは別のところで、数式による判断が行われるわけだから、それが欠点といえば欠点だが、基準が一定していることは最大の長所だな。どんな情勢であろうと、終値の推移だけで機械的に判断するのだから、いわゆるブレがない。

 

手仕舞い、つまり「建てた玉を必ずゼロにする」ことは、ちゃんと相場を学んだ人にとっては当たり前だ。だけど、初心者やヘンなクセがついている人にとっては、利食いでも損切りでも玉を切ることに抵抗を感じて実行できないから、中源線のルールはとてもありがたいよな。

 

だから中源線は、「練習の道具」としても優秀なんだ。そして練習の段階を終わったあとでも、売買の道具として非常に有効ってわけだよ。

 

─分割の売買も大きな特徴かな。

 

それこそが、実践的な部分だ。陰転時でも陽転時でも、転換後の最初の売買は順張りになるが、その後の増し玉や、途中の手仕舞いは逆張りで、簡素な3分割だ。機械的な判断だけでは「当てよう」という発想の延長ともいえるが、分割売買という要素が加わることで、全く異なるものになる。売買の技法というものは、分割売買から始まるといっていい。

 

─中源線をひとつの手法として分類するのかどうか、という議論があるよね。

 

単に”言葉”の問題だが、「ひとつの手法」でもいいと思うよ。でも、強いて言えば、「うねり取り売買を実行するための道具」だろうね。

 

─ついでの質問で、ツナギ売買については?

 

ツナギはツナギで、ひとつの手法だ。「山種」の名で知られる山崎種二さんは、ツナギのコストダウンで財をなした。だからオレも、ツナギについて研究と実践を重ねた。ただし実践面では、うねり取りのためのツナギが中心だったな。うねり取りである程度のレベルになり、値動きを受け止めて感覚通りの売買を実行するためには、ツナギが不可欠な技ということだ。

 

でも、「ツナギを利用すればいい」というものではない。やたらとツナギを使う人がいるけど、”ひねくれたワザ”を使うだけで内容的には”堕落”している、そんなケースばかりだ。

 

ツナギを駆使するプロでも、やたらとツナギ玉を建てないよ。無意味にツナギをかけたら、自分ではどうすることもできない玉、つまり対処不能な「両建て」が出来てしまうだけだからな。

 

流行のシステム売買でも、同じなんじゃないのか? 工夫しようとして余分なことばかり考え、自分では手に負えない複雑なものを作ってしまう・・・しかも精度は低い。まさに悲喜劇だ。

 

─中源線について、もう少し聞きたいんだ。中源線を「システム売買」のツールとして使う人も多くいるよね。

 

それはそれで、いいと思う。機械的な判断で売り買いの法示(中源線における売買シグナル)が出るんだから。

 

だけど、「玉のない期間」は絶対に必要だ。その期間を”どうやって”つくるのかの判断は、人間の仕事だ。慣れと経験で、中源線を使うべきところがわかってくる。実際、中源線を使っている上手な人は、みんなそうやっているよ。

 

中源線の判断と自分自身の感覚が同時にあるのだから、ある意味、混乱しやすい状況だ。でもそんなことは、どんなやり方でも同じだ。とことんシステムで行う売買だって、最初の発想は人間のアナログ的な感覚だし、システムを作り上げる過程も人間の作業、そして最後にシステムを動かす決断も人間の手によるものだ。

 

必勝法がないのと同じことで、夢のような「完全なるシステム売買」なんてあり得ないと思うよ。ただひとつ、どこまで人間が手を出すのかという線引きの問題だな。

 

(次回に続きます)

1926年10月17日生まれ。陸軍士官学校第61期生。法政大学経済学部および文学部卒業。1948年、平和不動産10株を92円50銭で買い、利益をあげたのが初めての相場。1955年、東京穀物商品取引所仲買人・隆昌産業株式会社に入社。1962年、ヤマハ通商株式会社を設立。東京穀物商品取引所の受渡処理委員、資格審査委員および東京穀物商品取引員協会の理事、監事を歴任した後、1972年に林輝太郎投資研究所(現・林投資研究所)を設立。相場における専門は、FAI投資法、うねり取り(株式)、サヤ取り(商品)。著書多数。

著者紹介

投資顧問会社 林投資研究所 代表取締役

1963年生まれ。幼少のころより投資・相場の世界に慣れ親しみ、株式投資の実践で成果を上げながら、独自の投資哲学を築き上げた。

中源線建玉法、FAI投資法を中心に、個人投資家へのアドバイスを行っている。また、投資助言、投資家向けセミナー等を精力的に行うかたわら、投資情報番組「マーケット・スクランブル」のコメンテーターも務めている。林投資研究所の創設者である故・林輝太郎は実父。

【林投資研究所YouTubeチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCdRYlOYZg1Z0LTQ5SbVYQnw
⇒過去の生放送(マーケット・スクランブル)や、正しいプロの考え方を学ぶ短時間動画を続々公開!

【主な著書】
『うねり取り株式投資法基本と実践』
『東証1部24銘柄でらくらく2倍の低位株選別投資術』
『プロが教える株式投資の基礎知識新常識』
(以上、マイルストーンズ刊)

『【徹底解説】FAI投資法完全ルールブック』(林投資研究所刊)

著者紹介

連載プロ投資家の「相場哲学」に学ぶ株式トレード術

億トレⅢ プロ投資家のアタマの中

億トレⅢ プロ投資家のアタマの中

林 知之

マイルストーンズ

コントロール不能の相場を相手に、投資のプロたちは「何を見て、何を学んだ」のか、「何を考え、どう行動した」のか、そして「何にこだわり、何を捨てた」のか―― 6年に及ぶ長期取材を経て、今だからこそ伝えたいマーケット…

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