前回は、「プライベートカンパニー」のメリット・デメリットについて説明しました。今回は、自分の資産を運用のプロに委託する「委託収入系資産」について見ていきます。

やはり香港やシンガポールのPBが利用しやすい!?

これまで不労収入系資産、受取期間限定の一括収入系資産と紹介してきましたが、こうした商品に加えてやっておきたいのが、「委託収入系資産」の運用です。文字通り、自分の資産を運用のプロに委託してしまう商品です。

 

資産を運用する時間がないほど忙しい人に向いた選択肢と言えますが、国内では活用しづらい、ある程度資産をまとめないと利用できないといった制限もあります。その反面で、一度委託してしまえば、あとの運用は任せることができるといったメリットがあります。

 

そのひとつが富裕層を対象にした金融機関である「プライベートバンキング(以下PB)」を使って運用する方法です。

 

PBというのは、最低100万ドル(およそ1億円)以上の預入(持ち出し)できる資産を保有する「富裕層」を対象としてあらゆる金融サービス、及びコンシェルジュサービスを提供する金融機関のこと。スイスが発祥の地であり、代々続く名家の資産管理、運用をはじめとして、子女の学校の手配から旅行の手配など、様々なサービスを提供しています。

 

日本国内にも「プライベートバンキング」という名前の付いた銀行の部署や外資系金融機関がありますが、金融サービスに対して様々な制限がある日本国内では、純粋なPBは存在しないと考えていいかもしれません。

 

そういう意味では、PBを使って資産運用を考えるためには、海外でのPBを使うという考え方が必要になります。実際には、スイスや米国というよりも、日本から距離的にも近い香港やシンガポールのPBのほうが利用しやすい環境と言っていいでしょう。また、これらの地域にあるPBは規制も少なく、グローバルスタンダードなPBです。

一括して海外のPBに運用を委ねるという手も

PBでは、ひとりの顧客にひとりの「プライベートバンカー」が長期間にわたって担当を務めます。場合によっては、ひとりのバンカーが生涯、特定の顧客及びその子供、孫に至るまで担当するケースも珍しくありません。富裕層の資産を代々管理し、資産を運用してきたのが、現代の欧州に見られるPBの姿と言っていいでしょう。

 

資産運用、資産管理はもちろんのこと、その他、顧客の次の世代に事業や資産を円滑に承継していくための様々な助言を行います。さらには「コンシェルジュサービス」と呼ばれるきめ細かな各種サービスを提供し、日常的な税務相談や法律相談、美術品の購入相談などのサービスも提供します。

 

とりわけ、欧州のPBというのは、旅行の際のホテルや飛行機の手配、病気になった際には超一流の医師と病院を手配してくれる、そんなサービスまで提供するのが一般的です。

 

一方、米国式のPBというのもあり、こちらは金融サービスを中心に提供すると考えていいでしょう。最近は、コンシェルジュサービスも提供するようになってきていますが、欧州のようにひとりのバンカーが様々なサービスを提供するというシステムにはなっていないようです。

 

かつて、日本でもシティバンクのPB部門が大きく業績を伸ばし、日本の富裕層を中心に活動を展開していましたが、香港を経由したマネーロンダリング(資金浄化)に関する事件などを起こし、日本市場からの撤退を余儀なくされています。

 

また、日本国内にも、独立系、大手金融機関系など、複数の金融機関がPB機能を持ってサービスを展開しています。ただ、残念なことに日本の金融機関というのは銀行、証券、信託銀行という具合に、業態が明確に分類されているために、ひとつの金融機関のなかで一括して様々なサービスを提供することができません。PBのような業態が法的に認められていないのです。

 

PBの本場であるスイスの大手金融機関なども、これまでに何度か日本に進出していますが、中途半端な形になっているのが現状です。

 

さらに、アメリカに次ぐ富裕層人口が多い日本でPBが広がらない理由として、プライベートバンカーに対する報酬制度の違いもあります。日本と海外とでは、天と地ほどの差があり、日本ではプライベートバンカーになりたいと考える人が少ないのも現実です。

 

そうした事情を考えると、やはりお勧めは海外のPBを活用することになりますが、たとえば開業医のなかにはファイナンシャルゴールに近づいてきた段階で、1億円を超える金融資産を保有している人が少なからずいます。それだけの規模の金融資産があれば、一括して海外のPBに運用を委ねてしまうのもひとつの方法と言えます。

 

実際に、48歳の段階で1億円の金融資産があった開業医のGさんは、5年足らずで金融資産を2億円に増やし、その段階で海外のPBに半分の1億円を委託。それを何度か繰り返して、PBの運用も高いパフォーマンスを達成。65歳の時点で金融資産の合計が5億円に達していました。早い行動と大胆な決断が、5億円の資産形成につながったと言っていいと思います。

本連載は、2015年8月4日刊行の書籍『開業医のための資産形成術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医のための資産形成術

開業医のための資産形成術

恒吉 雅顕

幻冬舎メディアコンサルティング

かつて開業医は、勤務医より圧倒的に収入が多く、リタイア後の悠々自適な生活を保障されていたことから、将来安泰な職業だと言われていました。しかし今、税制改革による富裕層への増税や、2025年問題へ向けた医療制度改正によ…

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