アパート事業の基本は「インカムゲイン」狙い
不動産投資というと、いまだに「安く買って高く売ること」だと考える方がいます。これは、1億円で買って2億円で売るというスタイルの投資です。しかし、成熟経済に突入している現在の日本では、不動産は必ず上がり続けるという状況ではなくなっています。
バブル崩壊前までは確かに「土地神話」なるものがあり、事実、オイルショック等の特殊事情を除き、不動産は必ず毎年値上がりしてきました。しかし、もうその時代ではないということを我々はきちんと理解しておく必要があります。不動産価格は上がったり下がったりする時代になったのです。
一方、現在のような深刻な不況時においては、「そもそも不動産が値下がりする場面において不動産に投資して大丈夫か?」といった声があります。また、「バブル崩壊後のように自己破産したり、下手したら自殺にまで追い込まれることにならないの?」とまで訊ねられることもあります。たしかに、現在の不動産市況は下落の様相を呈しています。
しかし、本連載で提唱するアパート事業は、不動産価格の上がり下がりは大きく関係しないのです。先の疑問はどちらも極端な例ですが、アパート事業はいずれとも異なる考え方によって成り立ちます。
それは、アパート事業の対象としている収益が、毎月毎月アパートから上がってくる家賃にあるためです。つまり、毎月毎月入ってくる「インカム」を目的とした投資であり、そして、中長期的にその家賃を目的とした事業を行っていくという点が大きな特徴なのです。
家賃は株式と異なり、また不動産価格とも異なり、安定性があります。景気動向に大きく左右されないのです。サブプライムローン問題以降、不況になったからといって、10万円の家賃が5万円にはなりませんでした。
つまり、不動産価格自体は上がったり下がったりと変動する一方で、家賃収入は基本的には一定(都心部の高級マンションは例外)なのです。その家賃収入を目的にするアパート事業は、安定性が高いということになります。
不動産と現預金の比率は「10対1」が理想
資産形成にあたっては、収益用不動産における一点突破が有効ですが、より詳細にその方法について考えたいと思います。具体的には、どのようなかたちでその資産形成を実行するのかを、考えなければなりません。
不動産を取得、維持していくためには、ある程度の現預金が必要です。それは、大きく2つの理由からなります。
1つ目は、万が一のための余裕資金としてです。家賃収入を目的とした収益用不動産を保有すると、突発的な事故(故障)に見舞われることもあります。たとえば、突然エレベーターが故障し、数百万円の修理費が必要になることもあるでしょう。また、水漏れによってリフォームに100万円程度かかることもあるでしょう。このような事態に備えて、現預金をストックする必要があります。
2つ目は不動産取得のための資金です。資産形成の観点からは、追加で物件を取得していく必要があります。物件の取得に関しては、諸経費まで含めて全額借りられればいいのですが、ある程度の自己資金は必要になります。そのため、物件の買い増しに備えて、ある程度の現預金のストックも必要となるのです。
以上のように、資産形成においては不動産に一点集中して投資し、残りは現金(預金)で保有するのが望ましい、というのが私の考えです。筆者自身も大部分を不動産に投資しており、残りは全て現金(預金)としています。
そして、不動産と現預金の比率ですが、10対1が理想であると考えています。
たとえば、10億円の不動産およびその借入がある場合は1億円の現預金、3億円であれば3000万円の現預金をストックします。つまり、不動産およびその借入の金額に応じて、現預金をストックしておく必要があるということです。
これには、もう一つの狙いがあります。それは、インフレ、デフレなどの経済情勢の大幅な変化へのリスクヘッジです。インフレになれば、現金の価値は下がるものの、不動産の相対的価値は上がります。デフレになれば、不動産の相対的価値は低くなりますが、現金の優位性は高くなります。
以前なら、株式や外貨に投資することでリスクを分散するという考え方もありました。しかし、サブプライムローン問題に端を発した金融危機により、全ての金融商品の価値が下がるという結果になったのです。この金融危機以降、家賃収入を目的とした不動産投資や現預金の優位性が際立ってきた事実は、注目に値します。