法定通貨という存在から考える「現代の金融政策」の課題

今回は、法定通貨という存在から考える「現代の金融政策」の課題を見ていきます。※本連載は、米国・ダートマス大学で公共政策・経済学を教えながら、全米ベストセラーとなった『経済学をまる裸にする(Naked Economics)』などの著書を持つ、チャールズ・ウィーラン氏の著書、『MONEY』(東洋館出版社)の中から一部を抜粋し、「お金」のしくみについて解説します。

「財の供給にまつわる不確実性」を解決する方法とは?

前回の続きです。

 

でも本当に米や小麦に基づいた財産が望ましいだろうか。これらの作物は、意外と予測のつかない価値貯蔵手段だ。ある農家が、米の収量が3倍、4倍になる新技術を発明したとしよう(最近実際に起こったことだ)。米の供給が激増すれば、生涯の蓄えの価値は下がってしまう。あるいはその反対で、米の病気で備蓄が一掃される可能性もある。

 

そして通常の状況下でも、選ばれた商品の供給が経済成長と同じ比率で増加すると考えるべき根拠はない。つまり他の商品に対するその商品の量で、物価の上下変動が左右される。10年後、20年後、30年後に、他の商品に対する米の価値がどうなっているかわからないとしたら、米建ての長期契約を結びたいだろうか。

 

ありがたいことに、どんな財の供給にまつわる不確実性も解決できる簡単な方法がある:財のバスケットを基盤とする通貨だ。「商品ドル」は1ドルあたり、米1キロ、ガソリン1ガロン、牛乳1クォート、iTunesの楽曲6曲、等々と交換可能だとしよう。会計は少々複雑になるが、通貨の価値が安定しているかぎり、消費者はこの制度に慣れる。

 

これらの財産ドルの所有者は、ひとつの財の供給の急な増加/減少の影響を受けない。この通貨は実物による、明確な購買力を持つ。通貨の基盤となる商品バスケットが大きければ大きいほど、通貨の価値は安定するし、経済全体の成長との相関性も高くなる。

ゼロからお金を創造でき、なくすこともできる中央銀行

ご承知の通り、これは思考実験なので、すこしばかり想像してみよう。ある通貨を湿っぽい奥の小部屋に持っていくと、予測通りの量の食料、エネルギー、電力、自動車、自転車と交換できると想像してほしい。このお金の基盤は黄金でも米でもない。日常的に消費するすべての財やサービスのサンプルが基盤となっている。

 

さらに良いことには、多様な財のバスケットに対するこの風変わりな新しいお金の購買力の変動は、年間数パーセント以内におさまる。財やサービスを持ち金でどれだけ買えるか、現在についても、ずっと先についても、かなり正確に想像できるのだ。このすばらしい仮想上のお金は、ひとつの商品を基盤とするお金の長所すべてを持ちながら、短所がない。お金の各単位を、長期間にわたって予測通りのレートで広範な商品のバスケットと引き換えられるのだ。

 

さて、この実験でショッキングなのはここから:いま説明したのはドル、ユーロ、円、その他さまざまな法定不換通貨だ。そう、これらはただの紙(あるいはビットやバイト)だが、通貨を発行する政府がきちんと仕事をすると、この紙切れ(およびビットやバイト)は広範な財やサービスのバスケットに対して、はるか将来も、予測通りの価値を持つ。

 

そこに現代の金融政策の課題がある。中央銀行はゼロからお金を創造できる。お金をなくすこともできる。カチッ、カチッ、カチッ。中央銀行の職員がマネーサプライを増加/減少させる音だ。責任ある中央銀行当局は、法定通貨を操作して金融パニックを食い止め、安定した経済成長を促す。無責任な政治家は、同じすさまじい権力を使って向こう見ずにお金を乱発して、紙幣の価値をトイレットペーパー以下にしてしまう。

 

歴史には両方が登場してきた。

 

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    ダートマス大学 

    ダートマス大学で公共政策と経済学を教える。著書に全米ベストセラーとなったNaked Economics(『経済学をまる裸にする』日本経済新聞出版社)とNaked Statistics(『統計学をまる裸にする』日本経済新聞出版社)がある。

    著者紹介

    連載もう一度学ぶお金のしくみ~チャールズ・ウィーラン著『MONEY』より

    本連載は、2017年12月15日刊行の書籍『MONEY』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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