評価減には「組織のスクラップ&ビルド」が効果的
前回までは、「類似業種比準方式」で計算する場合は、配当、利益、純資産の3つが株価を押し上げる大きな原因になること、また「純資産価額方式」で計算する場合は、内部留保や含み益などが自社株の評価を高めてしまっていることを述べてきました。
そのため、自社株の評価を下げるためには「利益」を圧縮し、「純資産」を増やしていると思われる資産を整理し、その両方を下げられるよう「組織のスクラップ&ビルド」を行っていくことが効果的になります。そこで、ここからは評価減につながる9つの具体策を説明していきます。
利益圧縮に最も効果が高いのは「役員退職金の支給」
Point 利益圧縮策① 役員退職金の支給
自社株評価引き下げのために、利益を圧縮する対策として最も効果があるものが、この役員退職金の支給でしょう。長年に渡って会社を発展させてきた現経営者が退職する際には、当然、多額の役員退職金が支払われて然るべきです。そのため、現経営者が退職する決算期では、場合によって大きな赤字が計上されることがあるのです。当然、自社株評価も下がります。
このタイミングを見計らって、後継者に自社株の贈与などをしていくことが、自社株承継の大きなポイントになってきます。ただし、現経営者が退職して多額の役員退職金を取るというのは、1回しかチャンスはありません。したがって、これをいつの時期に行うのかを決めることが非常に重要になってきます。もちろん、退職金や自社株評価のことだけでなく、社内や対外的にもベストなタイミングを探る必要があります。
さらに、退職の仕方もいろいろあります。代表も取締役もすべて退任してしまうのか、代表だけは退任するが取締役としては残るのか、あるいは代表権も残して代表取締役会長になるのか、などさまざまです。どの形態をとるかによって、役員退職金を取れるかどうかも変わってきます。
役員退職金を取ろうとすれば、すべて退任するか最低でも代表権ははずさなければなりません。すべてを退任すれば問題なく役員退職金を取れますが、代表権だけはずして非常勤取締役になった場合(これを分掌変更といいます)などは、要件が厳しくなります。
まず、実質的に経営の意思決定をしない地位になければなりません。代表を退任したのに、今までと同じように人事権を持っていたのでは、役員退職金は認められません。そのうえで、税務上は次のような場合に、役員退職金を認めることになっています。
①常勤役員が非常勤役員になったこと
②取締役が監査役になったとき
③分掌変更の後の役員の給与がおおむね50%以上減少したこと
なお、役員退職金の額は一般的に次の計算式で計算します。
最終役員報酬月額 × 役員在任期間 × 功績倍率 = 役員退職金
この功績倍率は一般的には社長で3倍程度までといわれています。できれば、役員退職慰労金規定をつくって、自社独自のものを定めておくことが望ましいでしょう。
この話は次回に続きます。