今回は、任意後見を活用した、貯金も身寄りもない高齢者の入院サポートについて見ていきます。※本連載は、「一人暮らし高齢者」の見守り支援を行うNPO法人の設立者である大野益通氏の著書『一人暮らしで生きていくための任意後見入門』から一部を抜粋し、任意後見制度を利用した高齢者支援について見ていきます。

身元引き受け人がいない場合、病院への入院は難しい

前回の続きです。

 

Aさんが暮らす町役場の社会福祉士の方から、「市民後見人センターとちぎ」に相談の電話があったのは、そのころでした。

 

「一人暮らしのがん患者Aさんの成年後見人になってほしい。家や土地もあるAさんだが、貯金がなく、入院治療費支払いの見通しが立てられない。病院に受け入れてもらえない。頼れる身寄りもいない。『市民後見人センターとちぎ』の方で、Aさんの支援に入ってもらえないだろうか」

 

入院・治療費の支払いにあてる当座の費用もなく、もし、入院中に亡くなったときの引き取り手がいない場合、それらの保証をおこなう人(身元引き受け人)がいなければ、病院は受け入れてくれません。

 

私(大野)とスタッフは、Aさんが暮らす町にうかがい、地域包括支援センターの担当者と役場の福祉課の方にお会いし、話を伺いました。聞けば、役場を通じて、Aさんの親族に「Aさんの身元保証人になってほしい」と連絡しましたが、断られてしまったこと。Aさんにはごきょうだいもいらしたのですが、高齢のため引き受けることはできないという返事だったこと。

 

私にどんなサポートができるのか、その時点ではわかりませんでした。とるものもとりあえず、病院に駆けつけ、医療ソーシャルワーカーの方に立ち会ってもらい、Aさんと対面しました。

「見守り」という形で後見人を依頼し、入院の手続きへ

私(大野)「体調はいかがですか」

 

Aさん「今年の夏から食欲がおち体重が10㎏減ってしまいました。あまり体調が悪いので病院を受診したところ、検査しなくてはならないが腹部腫瘍の疑いがあるといわれました」

 

私「Aさんご自身の希望をきいておきたいのです。手術や抗がん剤治療を望まれますか?」

 

Aさん「それは望みません。治療に関しては、痛みはできるだけとってほしい。食事も満足にとれないし、入浴も一人ではできません。今はゆっくり病室ですごしたい。よくなったらケアハウスに入りたいな」

 

私「まずは私どもがAさんの『見守り』をさせていただくということでしたら、Aさんが入院する準備をすすめることができます。でないと、必要なものをご自宅に取りに行くことが法的に許されないんです。ですので、私どもがAさんと『継続的見守り契約及び財産管理委任契約』を公正証書で結んだのちに、その受任者として入院の手続きを進めていくことで構いませんか?」

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