安心をもたらした「旅立ちの日まで看ます」との確約
前回の続きです。
余命宣告から2カ月。必要な身のまわり品を取りに行きたいというAさんをご自宅に介護タクシーで送迎しました。その帰り道、「市民後見人センターとちぎ」のスタッフ2名は、Aさんと昼食をとりました。Aさんはラーメンと餃子を2個、美味しそうに召し上がっていました。
もう一つ、Aさんの大好物はお寿司です。医師の先生からは「食べたいものを食べてもらっていいですよ」「したいことがあればできる限りさせてあげてください」と言われています。
数日後、Aさんの様子をうかがいに行きました。
「大野さん、ありがとう。俺の大好物はお寿司」
そういいながら、Aさんは、私がお持ちした大好物のマグロのお寿司をゆっくりと口に運び、完食されたのです。
がんの進行は医師の余命宣告どおりでした。年が明けた1月、しだいに弱っていくAさんでしたが、表情は明るく、安らかに過ごされていました。病院の医療ソーシャルワーカーが、「旅立ちの日までAさんを看ます」と確約してくださったことが安心につながり、旅立ちの支度を私たちにすべて任せられたことも、精神面で大きかったのではないかと感じています。
葬儀だけでなく、家財道具すべての整理・処分も実施
Aさんは1月末に旅立ちました。「死後事務委任契約」にもとづいて、「市民後見人センター」が、Aさんのご遺体を引き取り、葬儀ホールに安置しました。宗教者、ゆかりのお寺にも連絡し、通夜・葬儀・告別式をとりおこない、その日取りは、Aさんの知人そして地元の老人会にも知らせました。Aさんの遺言通り、遺骨は、亡くなったお連れ合いとAさんのお母上の遺骨と共にお墓におさめました。
これら死後事務にかかわる費用と医療費・入院費・ローン負債等は、銀行の不動産部を通じてAさんの土地などを売却したお金で、何とかまかなうことができました。売却に先立ち、「市民後見人センターとちぎ」が、ご自宅の家財道具すべての整理・処分もしました。
そのほか、Aさんの死後事務として、住民票抹消、保険・年金などの資格喪失届など、行政機関への手続きもおこないました。一周忌には、あらためてAさんの供養を、と思っています。