体調に異変が起きた、ある一人暮らしの高齢男性
半年前から体調を崩し、食事をとるのも難しい状況に
Aさんは80歳の男性。10数年前、お連れ合いに先立たれ、自宅で一人暮らし。元気なときは、掃除洗濯、買い物、調理も自分でこなし、部屋を片付けることもできていました。
そんなAさんが、半年前から体調がすぐれなくなり、食事をとるのが難しい状況になったのです。
地域包括支援センターと社会福祉士のすすめで病院で受診したところ、腹部に腫瘍があると診断。「転移の可能性もあり治療については検査してみなければわからない」という医師の見立てでした。体調が悪くなり始めたころは、訪問看護サービスと週一回のホームヘルプで買い物・調理の支援を受けながら、自宅で暮らしていたAさん。しかし、「身寄りのないAさんの最悪の状況も想定しておかなければ」――Aさんを案じる地域包括支援センターの方々は、Aさんのサポートについてかんがえることになりました。
預貯金なし、保証人なし・・・入院・検査を阻む複数の壁
すぐにも入院して、検査をすすめたいAさん。しかし、現実にはいくつかの壁がありました。
[図表1]Aさんが抱える問題
①入院・治療にあてる預貯金がない。
②年金受給で生計しているが、月々のローン返済のために、生活費も確保できない状況であること。Aさんは自宅のリフォーム代、新車や大型冷蔵庫など不必要なローン契約をさせられていたこと。
③入院にさいして身元保証人がいない。役場がAさんの近親者に連絡したところ保証人を断られた。
生活費の確保、入院治療費のねん出、病院に長期入院して治療をうけるための身元保証人、ローン負債の処理、末期がんということから、死後には遺体を引き取り火葬してくれる人を探さねばなりません。
Aさんが暮らす町には、日常生活に不安を感じる高齢者などが、福祉サービスを利用する手助けや金銭管理サービス等を行なってくれる地域福祉相談の窓口もあります。そこでは、生活資金の貸付もありますが、入院費の立て替え払いをした後に、自宅の土地などを売却して、その費用をねん出するには色々と条件があります。日々、体調が悪化していくAさんのサポート体制を早急にすすめる必要がありました。
[図表2]地域福祉相談の窓口で、できることできないこと