今回は、身寄りのない高齢者を救う、行政・医療・地域と、市民後見人のサポートについて見ていきます。※本連載は、「一人暮らし高齢者」の見守り支援を行うNPO法人の設立者である大野益通氏の著書『一人暮らしで生きていくための任意後見入門』から一部を抜粋し、任意後見制度を利用した高齢者支援について見ていきます。

自宅のリフォーム以外に、冷蔵庫・新車もローンで購入

前回の続きです。

 

もう一つ、Aさんが支払っている月々のローンのことが気になり、ご本人に尋ねました。

 

私「Aさん、元気になられましたね。私ども『市民後見人センターとちぎ』が委任受任者となりましたので、今後、Aさんの身上監護と財産管理をさせていただきますね」

 

Aさん「よろしく頼みます」

 

私「Aさんはご自宅のリフォームに数十万円、同じく冷蔵庫もローンで買われていますが、どうされたのですか?」

 

Aさんにうかがうと、数年前に壁のリフォームを業者に勧められ、何度も自宅に来られて断れなくなったとのこと。しかし、どう考えても数十万円もかけなければならない修理だったとは思えません。それだけでなく、Aさんは大型冷蔵庫を30万円で買っていました。深い事情はわかりませんが、独居の高齢者の寂しさに付け込んだもののようにも思われました。さらには新車まで購入していたというAさんのローン残額は、社会福祉士の方が把握した時点で100万円以上にのぼっていました。

患者の悩みを解決・支援する医療ソーシャルワーカー

Aさんのサポートをめぐっては、行政・医療・地域の民生委員など支援の連けいが功を奏しました。まずは役場の福祉課の社会福祉士。その方がいなければ、「頼れる身寄りがいない」Aさんの状況を把握して、私たち市民後見人につなげることができなかったでしょう。

 

そして、医療ソーシャルワーカーの存在です。病院をはじめとする保険医療機関で働くソーシャルワーカーは、一般的に「医療ソーシャルワーカー」と呼ばれます。

 

病院へ入院あるいは外来通院する患者さんは、実にさまざまな不安や悩みをかかえています。

 

がん患者のおひとり様の場合、たとえば、「入院費はいくらかかるのか」「退院後の生活や仕事は元通りにできるのか」「介護をしてくれる人が見つからない」など、それぞれ困りごとの内容は異なります。

 

こうしたなか、社会福祉の立場にいる医療ソーシャルワーカーは、患者さんやその家族の方々が抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰を支援していきます。

 

[図表]行政・医療・地域と市民後見人が連けいしサポート

一人暮らしで生きていくための任意後見入門

一人暮らしで生きていくための任意後見入門

大野 益通

弓立社

身寄り・頼れる人がいない「おひとり様」でも、ご本人の思いにそった老後の生活・エンディングを実現することができる。 6人の高齢者のケースから、一人暮らしの高齢者が、施設入所・入院、死後の始末、葬儀・供養を託して、…

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