高齢者が「安らかな老後」を送る一つの方法
いっぽう、老後に備えてお金を蓄えている一人暮らしの方もいます。
ところがいわゆる「振り込め詐欺」や「リフォーム詐欺」など、一人住まいのお年寄りをねらう悪質な業者の存在が、近ごろ問題となっています。被害にあわれた方のなかには、ご本人も気づかないうちに、軽い認知症などになっているケースも多々見受けられます。「おひとりさまの老後」に備えてきた貯蓄も、こうなってはご本人の意思が活かされなくなってしまいます。
一人暮らしの高齢者が安らかな老後を送る一つの方法として、私は任意後見制度の利用をおすすめしています。
ひと言でいうと「任意後見」は、「判断能力が不十分になる前に、自分を見守り、支援してくれる人を選ぶ」そして「やってほしいことを決めておく」制度です。
ご本人に代わって、生活のことやお金のことなどをしてくれる人を「任意後見人」といいます。
いうなれば、任意後見人は「おひとり様の見守り人」なのです。長年私は、葬儀社を営み、介護事業所や介護ヘルパー養成学校もつとめてきました。その経験や専門性が、市民後見人としてのサポートに活きていると思います。
本人の意思・希望を尊重した終末期が過ごせるのが理想
高齢者をめぐる事情は、一人ひとり違いますが、ただ一つ、どなたにも共通することがあります。
心と心が通う介護・看護・医療、そして「見守り支援」や「任意後見支援」があれば、お一人でも、納得して人生の終末期を過ごすことは可能だということ。
終末期の迎え方は、施設で過ごす方、在宅で旅立ちを準備する方、さまざまでしょう。しかし、大切なのは、どんな状況であれ、ご本人の意思や希望を大切にするということです。
身体が不自由になっても、春には花見がしたい、お彼岸にはお墓まいりもしたい。たまには外出してお寿司でも食べたい。そのような小さな幸せを味わいつつ、納得して旅立ちまでを過ごす時間が、すべての人に必要です。
本連載では、NPO法人「市民後見人センターとちぎ」で、見守り支援や任意後見制度を利用されている6名の高齢者のケースをご紹介したいと思います。
どの方も、「おひとり様」であり、ご病気や経済的なことなど、それぞれ困難な事情をかかえておられました。
しかしまた、どの方も、支援によって自分らしい旅立ちの準備をすることができ、納得して旅立ちまでの日々を過ごされています。
①末期がん患者の男性のおひとり様
②介護してくれていた夫を亡くして独りになった女性
③年金収入で施設に暮らす高齢男性のおひとり様
④がん切除の手術をうけることになった男性のおひとり様
⑤低額の老人施設に暮らすことになった女性のおひとり様
⑥大腿骨骨とう骨折の後、介護認定を受け、自宅介護をうけることになった女性のおひとり様
本連載では、上記の①と②のケースをつぎよりご紹介していきます。