普通株式と権利の内容が異なる「種類株式」
相続発生前に株式の分散を整理しておくという話が出ましたが、相続後も株式が分散して経営に支障をきたさないための対策が必要です。株式分散リスク、つまり経営権の確実な承継のためには種類株式を活用します。
一般的に株式と呼ばれているものは普通株式のことです。一つの株式に与えられる権利は原則平等であり、株式を保有している株主は株主総会での議決権を有することで経営に参加でき、配当を受け取る権利など、その保有する株数に応じた権利を有しています。この普通株式とは別に権利の内容が異なる株式を発行することができます。これを種類株式といいます。種類株式には次の9つがあります。
種類株式の種類と具体的な機能
①配当優先(劣後)株式:株主ごとに異なる配当ができる
事業承継や相続を検討するにあたり、後継者に自社株を集中させることが難しい場合、後継者には普通株式を、事業に関連しない相続人に議決権のない配当優先株式を相続させることで経営権のバランスと資産の相続のバランスをとることができます。また、中小企268業投資育成株式会社や従業員持株会など、同族以外の株主に配当優先株式を引き受けてもらう活用の仕方もあります。
②残余財産分配優先(劣後)株式:株主ごとに異なる分配ができる
配当優先株式同様、後継者に普通株式を、後継者以外の相続人に議決権のない残余財産分配優先株式を相続させることで、相続人間のバランスをとることができます。
③議決権制限種類株式:株主総会での議決権を制限できる
議決権を制限されるのみでは不公平なので、通常①の配当優先株式とセットで用いることが多いです。議決権制限株式を活用することで、事業に関連しない親族には議決権制限株式を保有してもらい、後継者は普通株式を保有することで安定した経営体制を築くことができます。
④譲渡制限種類株式:特定の種類株式のみ譲渡を制限できる
会社にとって好ましくない株主の参画防止のため、株式譲渡の際には取締役会や株主総会の承認を得なければならないという制限を付けることができます。
⑤取得請求権付種類株式:株主が会社に対して所有している株式を買い取ることを請求できる
これは後継者以外の相続人にとって大きなメリットがあります。具体的には、当該相続人が相続する自社株を取得請求権付種類株式とすることで、個人的にお金が必要な時に自社株を換金することができます。そのため、後継者にとっては、いつ買取請求されるかわからず、会社の資金繰りに影響を及ぼします。なお、買取請求は会社法の財源規制の範囲内で行われます。
この話は次回に続きます。