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一般的な自社株対策の「メリット・デメリット」②

前回に引き続き、一般的な自社株対策の「メリット・デメリット」を解説します。今回は、純資産価額方式における株価の引き下げ方法を見ていきます。

中長期的には、納税したほうがメリットが大きい場合も

前回の続きです。

 

純資産価額方式における引き下げ方法も4つあります。

 

まず、先ほどの類似業種比準価額方式の利益金額でも触れたように、通常の法人税の節税法を駆使することで一時的に損失を計上させます。

 

次に、不動産を取得する方法もあります。土地や建物は取得金額と相続税法上の評価額が異なります。土地の評価額は通常路線価で行われ、取得金額の80%の水準です。建物の評価額は固定資産税評価額が用いられますが、取得金額の60~70%の水準です。そのため、不動産を取得することによって、純資産を小さくすることができます。ただし、評価時点で3年以内に取得した不動産は通常の取引価額によって評価されるため、地価が上昇した際にはかえって不利になります。もちろん、節税目的のみで取得した不動産は後々、不良資産となる可能性があるので、事業の方向性に沿って検討してください。

 

また、会社分割により会社の規模自体を小さくすることもできます。

 

最後に、純資産価額方式よりも類似業種比準価額方式の株価のほうが低い場合は、純資産価額方式のウエイトを小さくするため、会社の規模を大きくすることも効果があります。

 

ちなみに、株価を下げることは、簡単にいえば会社の価値を下げることです。赤字を出したり、資金を流出させたりすれば、確かに株価は下がりますが、その分、会社の体力・競争力は弱くなります。そのため、過度に株価対策するよりは、一定の税金を納めたほうが中長期的にはメリットが大きい場合もあります。

株価が高い場合には「M&A」や「IPO」も選択肢に

それでも株価が高い場合は、MBO、M&A、IPOを検討することも視野に入れます。MBO(Management Buy out)とは、経営陣による自社の買収を意味します。上場企業が非上場化する際にニュースで登場しますが、中小企業での利用も多くあります。事業承継の局面においては、後継者が主体となった受け皿会社を設立し、その会社が金融機関から資金調達して、会社の株式をすべて買い集める方法です。この方法により後継者は会社の株式を取得し、オーナーは自社株を譲渡することで譲渡所得税が課税されますが、相続税よりも税率が低く、相続財産を現金化することで相続税の納税資金対策にもなります。

 

ただし、デメリットとして金融機関から買取資金を調達できるのか、かつ、将来、返済できるのかという問題があります。また、株主が買取に応じるのか、利益相反取引となっていないかなどにも留意が必要です。

 

株価が高い場合はM&Aも選択肢の一つです。M&Aは、Mergers & Aquisitonsの略で、企業の合併、買収のことです。株価が高いということは、業績が良かったり、優良資産を保有したりしているなど、買い手から見たら魅力的な会社です。そのため、会社のさらなる成長のために大手の事業会社や投資ファンドに売却することも一案です。ただし、オーナー一族の役員退任を迫られる場合もありますので、留意が必要です。

 

なお、事業承継や自社株対策の指南書のなかには、繰越欠損金のある赤字会社を買収すれば株価が下がるという話もあります。確かに株価の算定のみに着目すれば、その通りかもしれませんが、その赤字会社の事業は今後、どうしたいのでしょうか。黒字に転換できなければただのお荷物です。くれぐれも、目の前の節税や自社株対策だけに目を奪われて、本来の目的を見失わないでください。

 

株価が高い場合はIPO(株式公開)も検討してみてはいかがでしょうか。上場企業も、もとは非上場の中小企業からスタートしています。そのため、会社のさらなる発展のためにIPOすることもありです。ただし、そのハードルは高く、実現までにはお金も時間もかなり要します。IPOするからには、それなりの覚悟が必要です。

久保公認会計士事務所 代表

2006年、公認会計士試験に合格し、あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)に入所。2011年に退職、経営コンサルティング会社を起業し、税理士法人の経営にも参画。東日本大震災時の中小企業再生支援で後継者育成の重要性に気づき、事業を後継者育成に特化。「3つの資格(公認会計士・税理士・中小企業診断士)」で会計戦略・財務戦略・経営戦略の面から育成支援を行う。

著者紹介

連載オーナー社長が知っておきたい「株式承継」の税務・法務

 

オーナー社長の後継者育成読本

オーナー社長の後継者育成読本

久保 道晴

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者の高齢化が進む中で、後継者不在に悩む企業が増えています。 適任者が見当たらない、子どもに継ぐ意思がないなどの理由で次期社長の目途が立たず、やむなく廃業を選択する経営者も少なくありません。 本書はこうした悩…

 

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