本連載は、会計事務所・経営者向けセミナー講演を年50回以上行い、相続・贈与に取り組む専門家ネットワーク発足などの活動にも携わる株式会社アックスコンサルティング代表取締役・広瀬元義氏が執筆・監修した『会社と家族を守る!事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、オーナー社長が知っておくべき「自社株承継」の9つのポイントを解説します。

自社株の価格が額面の100倍に!?

この連載では、「事業承継の本丸」自社株の承継について、詳しくお話ししていきます。
繰り返しになりますが、自社株とは、同族会社のオーナーやその家族が所有する株式の
ことで、「非上場株式」や「未上場株式」といわれるものです。この自社株の評価額が事業承継の際、障壁になるのです。

 

筆者著書『会社と家族を守る!事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46』で述べているように、長年好業績を続けた結果、多くの内部留保をもち、大きな含み益などがあれば、額面の100倍以上に評価されることがあるからです。そうなると、ただ後継者に株を承継するだけなのに、5000万円必要になった――というウソのような話が本当に起こるのです。
 

税務当局としては事業承継の際、当然正しい税金を納めてもらいたいと考えています。
そこであらゆる業種に対応するような、自社株の価値を計算する式をいくつか用意し、
きっちり税金を徴収できるよう手当しています。

 

ですから正しい対策としては、どんな計算式が採用されるのかを知り、専門家に相談し
て、自社株の評価をできるだけ下げられるよう、検討していくべきなのです。

会社の規模別に異なる株式の評価方法

実際にどのような計算式が採用されるのかを見ていきましょう。基本は会社の業種業態、売上規模、従業員数の3つが要因となり

 

「大会社」

「中会社の大」

「中会社の中」

「中会社の小」

「小会社」

 

の5つの区分に分けられたうえで、決まります。ただし、会社の従業員数が100人以上(2017年改正案により70人以上になる見込み)であれば、業種業態と売上規模に関係なく「大会社」となります。大会社以外の会社の区分は、業種により異なります(2017改正案……図表1参照)。

 

「小売・サービス業」「卸売業」「その他の業種」です。自社のデータと照らし合わせ、どれに該当するのかを判別してください。

 

[図表1]会社規模区分と会社規模別評価方法 平成29年度「財産評価基本通達」の一部改正(案)

①総資産価額と従業員数基準の、いずれか下位の区分を採用
②①と取引金額基準のいずれか上位の区分により判定
①総資産価額と従業員数基準の、いずれか下位の区分を採用 ②①と取引金額基準のいずれか上位の区分により判定 

 

つぎに、会社規模別の評価方法の図(図表2)をご覧ください。

 

大会社は「類似業種比準方式」が多く採用されます。そして中会社の3つならびに小会社は、「類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式」となり、それぞれの割合が決められています。いずれの場合も「純資産価額方式」のほうが評価額が低い場合は、それらを採用することができます。
 

多くの方は「中会社」に該当されると思いますので、ここでは類似業種比準方式から詳しくみていきます。

 

[図表2]会社規模別の評価方法

※類似業種比準価額<純資産価額の場合
※類似業種比準価額<純資産価額の場合

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『会社と家族を守る!事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46』から抜粋したものです(2017年6月7日第2版)。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

会社と家族を守る! 事業の引継ぎ方と資産の残し方 ポイント46

広瀬 元義

株式会社あさ出版

誰に会社を任せるべきか、何から手をつけるべきか? 事業承継のプロたちが教える基本から具体策まで!

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