今回は、葬儀にかかる一連の費用の目安と、近年多様化が進む、お墓の種類等について解説します。※本連載は、行政書士として活躍する山口朝重氏監修の『もしもの時の手続きガイド』(リベラル社)の中から一部を抜粋し、身内が亡くなった際にすぐに行うべき手続きをわかりやすく紹介します。

葬儀にかかる費用の総額は「約196万円」程度

大切な家族とのお別れの場である葬儀。事前に費用の目安を知っておくことで、いざというときも落ち着いて対処することができます。

 

(一財)日本消費者協会のデータによると、葬儀にかかる費用の総額は約196万円です。ここには、葬儀一式にかかる費用や寺院への費用、飲食接待費が含まれていますが、香典返しや親族の宿泊代などは含まれていません。

 

葬儀には、式場の祭壇設置・位牌・棺や骨壺・遺影・火葬料・霊柩車や火葬場へ向かうマイクロバス・その他運営管理費など、思っている以上に費用がかかります。相続税を計算する上で、葬儀費用は遺産総額から差し引くことができるので、領収書が出るものはもちろんのこと、些細なものでも書き留めておきましょう。

 

[図表]葬儀にかかる費用の総額

出典:(一財)日本消費者協会「第11 回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」(2017 年)より
出典:(一財)日本消費者協会「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」(2017年)より

 

※各項目の金額は平均値です。3項目の「費用」の合計と「葬儀費用の合計」は一致しません

 

 ポイント!

葬儀や埋葬にかかった費用の一部を補助してくれる制度があります。詳しくは本書籍の「5章 こんなときには?」の「5 -1 さまざまな制度を利用する」をご覧ください。

多様化するお墓選び・・・よく話し合って決定を

近年は少子高齢化により、お墓の継承が難しくなったり、認識の変化により代々のお墓を継承したくないという人も増えています。「遠方に住んでいる」「夫婦ともにひとりっ子」「独身で次の世代に引き継げない」など事情はさまざまです。

 

お墓の選び方も多様化しており、昔ながらの家墓(いえはか)や個人で入る個人墓、他人と一緒に入る共同墓、お墓を建てずに遺骨を保管する納骨堂などがあります。

 

お墓は、誰か1人の意思だけで決められるものではありません。故人の意志を尊重することはもちろん大切ですが、トラブルの元になりやすいので、まわりの人たちと十分話し合いながら決めましょう。

 

 ポイント!

継承者がいなくなったお墓を、無縁墓(むえんばか)といいます。無縁墓は、大都市を中心に増加傾向にあります。現行の民法では、墓地の使用者が指定すれば、子どもや親族でなくてもお墓を継承することができますが、どうしても継承者が見つからない場合は、永代供養墓(えいたいくようばか)に改葬(お墓の引越し)する方法もあります。なお、改葬には所定の手続きが必要です。

 

 家 墓 

代々の家族を祀り、子孫が継承していく従来型のお墓です。家名を刻み、家族や同一姓の親族が一緒に入ります。

 

 個人墓・夫婦墓 

個人墓は1人で入るお墓、夫婦墓は夫婦2人で入るお墓です。継承者がいない場合は、永代供養墓の契約が必要です。

 

 共同墓 

他人と一緒に入り、みんなで守っていくお墓です。安価に納骨・供養ができます。いつも誰かがお参りに来るので、花や線香が絶えることがありません。

 

 自宅供養(手元供養) 

遺骨(一部またはすべて)を自宅で安置する供養の形です。遺骨(遺灰)を入れることができるアクセサリーなどもあります。

 

 納骨堂 

専用の施設で、遺骨を管理(安置)します。墓石の購入やメンテナンスなどがないため、比較的安価に維持・管理することができます。また、街中にあることが多く、いつでもお参りに行くことができます。

 

 樹木墓(樹木葬) 

墓石の代わりに木を植えて、墓標とするものです。環境への負担が少ない、お墓の継承者がいなくてもよいなどのメリットがあります。

 

 散 骨 

遺骨を細かく砕き、海や山などに還す供養の形で、自然葬ともいわれます。

 

 ポイント!

墓地には主に、「霊園(民営・公営)」「お寺」があります。霊園は費用の安さ、墓石の自由度が高いなどのメリットがある一方で、郊外にあることが多く気軽にお参りに行くことができないというデメリットがあります。お寺は、付き合い(檀家〈だんか〉になる)や墓石の自由度の低さなどがありますが、街中にあるのでいつでも行くことができるというメリットがあります。

ペットが死亡したらどうすればいい?

大切なペットが死亡した場合、特に手続きは必要ありませんが、犬の場合は死後30日以内に市区町村や保健所等に「死亡届」を提出します(地域によって異なります)。

 

ペットの死骸は基本的に一般廃棄物として扱われますが、最近ではペット専門の葬儀社や霊園もあり、葬儀や火葬・納骨などを行ってくれます。ただし、法的な規制がなくトラブルとなるケースも少なくないので、業者を利用する際は比較をして、信頼できるところを選びましょう。

 

なお、小動物の死骸は自宅の庭に埋葬することも法律上は可能ですが、禁止している自治体もあるので事前に確認しましょう。

※本連載の内容は、平成29(2017)年9月現在の情報に基づいています。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

もしもの時の手続きガイド

もしもの時の手続きガイド

山口 朝重

リベラル社

「身近な人が亡くなった」 「相続の仕方がわからない」… そんな「もしもの時」に備えるために、手続きの仕方をわかりやすく解説。葬儀の手配のほか年金や相続などに関する手続きなど、期日が早いものから順に整理すること…

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