今回は、ブロックチェーンにおけるパブリック型とプライベート型の違いを見ていきます。※本連載では、アルタアップス株式会社代表取締役CEO 森川夢佑斗氏の著書『ブロックチェーン入門』(KKベストセラーズ)より一部を抜粋し、あらゆる産業にイノベーションをもたらすブロックチェーン技術の基本的な概要とその魅力について解説します。

プライベート型には、ブロックチェーンの管理者が存在

本連載でのブロックチェーンとは、パブリックチェーンのことを指して話をしているのは冒頭で述べた通りです(※書籍参照)。

 

しかしブロックチェーンの今後の発展において、プライベートチェーンが重要な役割を果たす可能性もあります。ここでは、簡単にプライベートチェーンについても触れておきたいと思います。

 

プライベートチェーンの代表例としては、国内ですとbitFlyerの「miyabi」、テックビューロの「mijin」などが挙げられます。

 

プライベートチェーンとは何か? パブリックチェーンとの比較から見てみましょう。

 

まず、パブリック型には管理者はいませんが、プライベート型にはそのブロックチェーンを管理する管理者が存在することが一番の違いと言えます。

 

そしてパブリック型の場合は、誰もがブロックチェーンのマイニングを行うマイナーとなれますが、プライベート型では管理者の許可を受けたものだけが、マイナーとなれます。

 

そしてパブリック型においては、コンセンサスアルゴリズムにおける承認作業がありますが、プライベート型においては必ずしも必要ではありません。

 

このようにプライベート型の場合は、パブリック型に比べて分散化されておらず、ブロックチェーンの分散化という観点では、少々メリットに欠けるでしょう。

 

[図表]パブリックチェーンとプライベートチェーンの違い

活かせる領域が異なる、プライベート型とパブリック型

しかし、プライベート型独自のメリットもあります。パブリック型の場合は、ブロックチェーンの仕様変更を行う際に、マイナーの賛同が必要ですが、プライベート型の場合は管理者の決定で自由に変更を行うことが可能です。そのため、より柔軟なシステムの構築ができるでしょう。

 

加えてプライベート型の場合は、新しい技術の検証などがしやすいため、プライベート型で実証したものをパブリック型に移行するといった利用の仕方もあるでしょう。

 

またプライベート型の中でも、管理者が単一の場合と複数の場合があり、後者は「コンソーシアム型」とも呼ばれています。

 

コンソーシアム型としては、米アクセンチュア、富士通、日立製作所なども参画する「Hyoperledger」、プロジェクト内の米IBM主導の「Fabric」やNTTデータとソラミツ主導の「Iroha」、日本の3大メガバンク(三菱東京UFJ・みずほ・三井住友)が参画している、R3コンソーシアムの「Corda」が代表的です。

 

R3コンソーシアムを例に取ると、これはブロックチェーンシステムを利用して、既存の金融機関のためにコスト削減を図ろうという団体です。

 

具体的には「Corda」と呼ばれるオープンソースのブロックチェーンを開発することで、銀行業務のすべてを包括し、送金手数料を安くしたり、送金時間の短縮の実現を目指しています。

 

こういったコンソーシアム型の場合は、プライベート型でありながら大規模なネットワークを構築できるメリットがあるので、分散型台帳としての恩恵を十分に受けることができるでしょう。

 

このように中央管理者を不要とする分散型とは異なる、プライベート型の場合でも、活用方法によっては大きなメリットを生み出すことが可能なので、独自の進化を遂げていくことが期待できます。

 

しばしば、パブリックチェーンとプライベートチェーンのどちらが優れているかといった議論が起きてしまうことがありますが、そもそも優劣の問題ではなく、活かせる領域が異なるということです。

 

したがって今後は、それぞれがどの領域や活用方法が向いているのかを議論していくことが必要になってくるでしょう。

ブロックチェーン入門

ブロックチェーン入門

森川 夢佑斗

KKベストセラーズ

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