署名を複数にすることでセキュリティを向上
前回は、暗号通貨を送金する際の電子署名について解説しました。
ビットコインを送金する際には、ひとつの電子署名で送金ができるのですが、ここで必要とされる署名の数を複数にすることもできます。
そういった送金手段のことを「マルチシグネチャー」と呼びます。不正取引の防止などセキュリティ向上に用いられる送金手段です。
例えば、送金の際に3つの署名を必要とするとします。そうすると2つの署名では足りず、3つの署名がないと送金を行うことができません。
[図表]マルチシグネチャーの仕組み
中央管理者なしの「エスクロー取引」が可能に
この署名を行うための鍵ですが、複数人が分けて管理することも可能です。分けて管理することで、仲介業者が一時的に代金を預かるエスクロー型の代金支払いをブロックチェーン上で中央管理者なしに実現することができます。ネット上で商品の売買を行うことを想像してみましょう。売り手と買い手、そしてそのマッチングを行うサービスの運営者がいるとします。
まず売買が成立すると、運営者が、買い手から売り手への代金分のビットコインの送金依頼に、保有する鍵で署名を行います。
この時点では、署名が揃っていないので送金はまだ行われません。売り手は、商品の発送を行った段階で、鍵で署名を行います。そして、買い手は、商品が無事に手元に届いた段階で署名を行います。
署名が揃った送金依頼がビットコインネットワークにて処理され、自動的に売り手にビットコインが送金されます。
このように運営者の行う売買のマッチングと送金依頼を自動化することで、実質的に中央管理者なしに、従来型のエスクロー取引を行うことが可能です。
もちろん、届いた商品が粗悪品であった場合や、配送先を間違えたといった人的ミスの対応について、従来通りカスタマーサポートは必要になるかもしれません。
このような支払いのエスクロー取引は、すでに多くのサービスで行われていますが、ブロックチェーンによりスリム化できることは、大きなメリットがあるでしょう。