今回は、企業を襲った「電力不足の混乱」の様子を振り返ります。※本連載では、SMBC日興証券株式会社のシニア財政アナリストとして活躍する宮前耕也氏の著書、『アベノミクス2020―人口、財政、エネルギー』(エネルギーフォーラム)から一部を抜粋し、人口や財政、エネルギーの観点から日本経済の課題を考察します。

東京電力エリアの経済活動を混乱させた「計画停電」

東日本大震災直後、日本経済は部品不足のみならず、もうひとつの供給ショックに陥りました。それは、電力不足の問題です。

 

福島第一原発事故や火力発電設備の被災などにより、東京電力は、十分な電力供給を確保できず、2011年3月14~28日まで断続的に計画停電を実施しました。電力会社が電気事業法で課せられている供給義務を果たせないという、まさに異常事態に陥りました。

 

なお、東北電力も計画停電の実施を発表しましたが、工場被災などで電力需要自体が落ちていたこともあり、計画停電の発動は結局、回避されました。

 

計画停電とは、確保できる全体の電力供給よりも、想定される電力需要のほうが大きい場合に、一部地域の電力供給を強制的にストップすることで、全体の需給をバランスさせる手法です。

 

東京電力は、計画停電の実施に当たり、ある程度公平となるよう、対象地域を順番に入れ替えました。そのため、計画停電は「輪番停電」とも呼ばれました。

 

ですが、計画停電の対象エリアの周知が不十分であった、あるいは計画停電が発動されるか否か当日にならないとわからない、といった問題が生じ、東京電力エリアの社会生活や経済活動は混乱状態に陥りました。

計画停電で、活動の全面停止に追い込まれた業種も

経済活動だけに絞ってみれば、影響を受けなかった産業はほとんどなかったといってよいでしょう。

 

計画停電発動の当初は、電車がストップして社員が出社できない、といった混乱がありました。製造業では、計画停電が実施されている間は操業停止に追い込まれるケースが相次ぎました。

 

電力供給が一時でも途切れてしまっては困るという業種もあります。身近な例では、食品・飲料関係がわかりやすいと思います。化学関係でも、一時でも電力供給が途切れると、製品の品質・鮮度を管理できなくなることから、結局操業を全面停止してしまうケースがみられました。

 

また、非製造業でも多大な影響が出ました。オフィスでは、強制的に電源がオフになってパソコンが使えなくなりました。店舗でも、自動ドアが開かない、エレベーターが動かない、レジも止まる、といった具合で開店休業状態に陥りました。

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