震災により、輸送機械工業の生産指数は大幅マイナス
当時を振り返ると、製造業の多くが供給ショックに直面していましたが、そのなかで最も影響を受けたのは自動車メーカーでした。
鉱工業生産指数をみると、2011年3月は前月比マイナス16.5%と大幅減産に陥りましたが、業種別では、自動車メーカーなどを含む輸送機械工業が前月比マイナス41.8%と突出して落ち込みました。輸送機械工業では、東日本大震災前の同年2月に比べて6割弱しか操業できなかったことを意味します。
輸送機械工業の生産活動を地域別にみると、やはり被災地のダメージが大きかったのですが、被災地以外でも影響が出ました。
東日本大震災の影響が最も大きかった東北地方では、前月比マイナス37.2%、計画停電による電力不足に直面した関東地区では前月比マイナス22.7%と大幅減産に陥っていますが、被災地から離れた中部地方も前月比マイナス17.4%、九州地方も前月比マイナス11.8%と、比較的落ち込みが大きかったのです。これは、なぜでしょう?
中部地方、九州地方のいずれも、もともと輸送機械工業へ依存度が高いという特徴があります。両地方ともに東日本大震災直後は、その輸送機械工業が大幅減産に陥りました。自動車メーカーとしては、本来であれば、東北地方の工場が被災して生産できない分、他地域で増産を図りたいと考えるのが自然ですが、そうできない事情がありました。
それは、素材メーカーや半導体メーカーの工場被災により、自動車を造るのに欠かせない部品が不足したためです。
[図表1]2011年3月の増減産率(地域別)
[図表2]2011年3月の増減産率(業種別)
日本の製造業の強み「サプライチェーン」が仇に
自動車産業に限らず多くの製造業では、ひとつの製品を造るのに多数の企業がかかわっています。原材料の調達から完成品の製造に至るまで、輸入業者、素材メーカー、部品メーカー、完成品メーカー、卸売業者、運輸業者などが分業を行っています。
この分業の連鎖は、サプライチェーン(供給網)などと呼ばれ、例えば、素材や半導体の分野で高い世界シェアを誇る企業が国内にあり、日本の製造業の強みとされてきました。
ですが、東日本大震災では、この強みが仇となりました。世界シェアを誇る企業が被災した結果、自動車を造るのに欠かせない部品が不足し、被災地のみならず、全国的な減産に陥ったのです。
また、一部の部品では、その不足により、海外の自動車生産に影響を及ぼすケースもありました。