前回は、プライベートバンクの組織形態について取り上げました。今回は、これからプライベートバンクの組織体制について考察します。

「株式会社」への転換で、規制環境への対応は容易に

今日の金融当局の規制は、取引相手やスイス国内外の監督官庁との取引に悪影響を及ぼしている、スイスの会社(株式会社)法と一致しています。

 

新しい組織体制(株式会社)に転換すれば、急速に変化している規制環境に銀行は対応しやすくなります。米国当局によるスイス銀行への攻撃は、無限責任のパートナーによるプライベートバンクの経営に対して明確な疑問を投げかけました。

 

いくつかのプライベートバンクは、資本を必要とする成長戦略を目指し、株式会社化しました。また、いくつかのプライベートバンクは、承継問題を抱えています。他にはIT革命に対応しきれない、もしくはこの時代の変化の流れに気付いたのが遅すぎた、といった理由で市場を去ったものもありました。

 

残念なことに、ベルン(スイス首都)へのプライベートバンクの政治的な影響力は減少しつつあります。

顧客への中立的な「アドバイザリー・サービス」が可能

我々は、創業者が自分たちの行動に対して独立した企業家として個人的に責任を持つことは、引き続き顧客に評価されていくと考えています。

 

無限責任の点から、当行は顧客に有利であったとしてもリスクの高い取引は行いません。さらに、四半期ごとに有価証券報告書を開示する必要もありません。

 

当行はほとんど融資を行いませんし、多少はスイス国立銀行(スイスの中央銀行)を頼りにしていますが、流動性や高いリスクを伴う利益を追求していないので、金融危機が起きた時には、多くの顧客がリスクを避ける戦略の効果を認めてくれました。

 

さらに、多くのプライベートバンクがほとんど金融商品を組成していないので、より中立的に顧客へのアドバイザリー・サービスを行うことができるのです。

プライベートバンクの嘘と真実

プライベートバンクの嘘と真実

篠田 丈

幻冬舎メディアコンサルティング

スイスの伝統的プライベートバンク経営者が共著・取材協力! その実態が初めて明かされる! 相続税増税や海外資産の取り締まり強化など、富裕層が持つ資産に対する捕捉は厳しさを増す一方。そんな中で注目されているのが「…

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