優先証券の運用に特化した米国スペクトラム・アセット・マネジメント社の最高執行責任者(COO)、シュー・R・バイヤー氏へのインタビュー。第3回目のテーマは、「金融機関の資本規制強化と優先証券の関係とは?」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)の幾田朋彦氏である。

規制が進む金融機関に残された選択肢の一つに

幾田 資本規制の変更についてのお話になりましたので、もっと詳しく掘り下げたいと思います。今でもなお、いくつかの規則は変えられようとしています。

 

最近ではスイスの金融規制当局がレバレッジ比率の新規制を発表しましたし、銀行を取り巻く環境はどんどん厳しくなっています。銀行株の保有者は、1株当たり利益が下がっていくことに内心穏やかではないと思います。それに対して、債券や優先証券の投資家にとって、資本規制の強化は好ましいのでしょうか? それとも好ましくないのでしょうか?

 

 

バイヤー あなたの言う通り、銀行株の保有者はこの状況に満足しているとは思えません。その理由は、金融機関がリスクを取れなくなったので、潜在的なリターンが、彼らの取っているリスクに見合わなくなってきたからです。

 

リスクとリターンは合わせ鏡のような存在です。高いリターンを追及するには高いリスクを取る必要がありますし、逆もまた然りです。一方で、私のような優先証券の投資家は株主と違い、企業の成長や、彼らが生み出す利益の最大化による恩恵を被ることはできません。

 

私は自分の投資した有価証券に対する利払いと、元本が最終的に返ってくることを期待して投資をします。つまり、利益の最大化のためにリスクを取る企業より、企業の信用力、言い換えれば企業の生存能力に期待をして投資をしているのです。したがって、一般株主にとっては好ましくない資本規制の強化は、優先証券ファンドのマネージャーにとっては歓迎すべきことに映ります。

規制により進化を遂げてきた優先証券は複雑を極める!?

幾田 優先証券は規制によって様々な進化を遂げてきたと思いますが、それゆえに複雑ですよね。私も債券の目論見書は数多く目にしてきましたが、ついこの間、永久劣後債の目論見書を読みこなすのに随分苦戦しました。債券と似たような特徴があると言っても、優先証券はやはり別物ですね。

 

バイヤー 金融業界には優先証券に限らずいくつもの専門分野があり、それぞれ異なるスキルや経験が求められるのはご存じの通りです。私自身、今は優先証券ファンドの運用者としての立場ですが、もともとは弁護士として優先証券の目論見書の作成に携わったこともありますので、読み手としての苦労はお察しします(笑)。

 

 

私共の運用責任者であるフィル・ジェコービは優先証券に関して25年以上のキャリアがありますし、27年前にスペクトラム社を創業したマーク・リーブはすべてのキャリアを優先証券に費やしています。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、スペクトラム・アセット・マネジメント社およびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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