優先証券の運用に特化した米国スペクトラム・アセット・マネジメント社の最高執行責任者(COO)、シュー・R・バイヤー氏へのインタビュー。第2回目のテーマは、「なぜ金融機関が優先証券を発行するのか?」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)の幾田朋彦氏である。

金融機関の危機管理対策として発行される側面も

幾田 優先証券の大部分が、金融機関によって発行されていることは、銀行や保険会社を取り巻くバーゼル規制をはじめとするルールが関係あるかと思いますが、その辺りの事情や現状についてお話し頂けますか?

 

バイヤー 優先証券の発行市場の80%を金融機関が占めており、その内銀行は60%を占めますが、それは自己資本規制に代表される「規制上の資本(Regulatory Capital)」による縛りが金融機関にあるからです。

 

 

事業会社には通常、規制上の資本というような概念がありません。自己資本規制は政府・当局が対象者に課すもので、その目的は金融機関の財務状態が悪化した時に、株主や債権者以外のステークホルダーを守ることです。金融機関の利用者を守るという意味では、自己資本規制は預金保険(ペイオフ)に通じるものがあります。

 

一般的に、各国の政府は国民や企業に銀行へお金を預けて欲しいと考えています。それが国民の貯蓄や企業への貸出の増加につながるからです。預金保険は、まさに預金者が安心してお金を預けることができる仕組みを裏で支えるためのセーフティーネットと言えるでしょう。

 

自己資本規制は、銀行だけでなく、保険会社のように簡単に倒産してもらっては困る金融機関にも課せられ、危機的な状況におけるクッションのような役割を果たすことを期待されています。債権者を不要なリスクから間接的に守る役割を果たす格付機関も同様の見方をするでしょう。

 

優先証券を発行することによって積み増された資本は、より弁済順位の高い債券をデフォルトリスクから守るクッションのような役割を果たします。実際の仕組みやものの見方は置かれている立場によって微妙に異なりますが、優先証券の発行者が金融機関に集中している事情は、規制に対応する以前に、金融機関としての危機管理対策という側面も否定できません。

 

出所:スペクトラム・アセット・マネジメント・インクおよびブルームバーグLLP。これらの企業が発行する優先証券は例示を目的としたものにすぎず、
当該有価証券の売買の推奨または申し込みではありません。(2015年3月31日現在)
出所:スペクトラム・アセット・マネジメント・インクおよびブルームバーグLLP。これらの企業が発行する優先証券は例示を目的としたものにすぎず、 当該有価証券の売買の推奨または申し込みではありません。(2015年3月31日現在)

優先証券の利率が債券よりも高くなる理由とは?

幾田 優先証券の発行によって調達される資本は金融機関にとってクッションの役割を果たす。発行体にそういったメリットがあるからこそ、支払われる利率はよりシニアな債券より一般的に高く、普通株主のように議決権が付与されないのですね。

 

バイヤー その通りです。デフォルト時の弁済順位についてもう少し詳しく説明すると、一般的なシニア債が最も優先順位が高く、普通株式が最も低いものです。優先証券はその間に位置しますが、シニア債より弁済順位が低いため、劣後プレミアムがシニア債の利率に上乗せされていることが一般的です。

 

 

また、資本に分類されるとはいえ、優先証券は株式ではありません。従って、企業価値が上昇したとしても、その価値上昇分は元本相当に限定されることが多く、支払われる利率は株式に支払われる配当と異なり、上下することはありません。

 

有価証券としての特徴としては、どちらかと言えば債券に近いのです。過去7年間で優先証券を取り巻く環境やルールは変化を続けてきました。それとともに、優先証券の種類や考え方も変わってきています。一貫しているのは、金融機関に対する自己資本規制が強化され続けているという点です。当局は金融機関に対してリスクとレバレッジの低減を求めており、その要求に応えるための手段の一つが優先証券の発行によるバランスシートの強化なのです。

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    本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、スペクトラム・アセット・マネジメント社およびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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