為替リスクはないが、信用リスクが高い「サムライ債」
では、為替リスクのない外国の債券はないのでしょうか。
実は、あります。「サムライ債」と呼ばれるものです。これは、外国の発行体が募集・発行する円建て債券のことで、「円建て外債」と言います。
ただリスクもあるのです。ヒントは過去に発行した国を見れば分かります。ギリシャ、トルコ、インドネシア、ブラジル、アルゼンチン・・・。
つまり、為替リスクはなくても、信用リスクが非常に高いこともあるのがサムライ債なのです。実際、2001年にはアルゼンチン国債のサムライ債がデフォルト(債務不履行)になりましたし、2008年にはリーマン・ブラザーズの社債のサムライ債がデフォルトになりました。
サムライ債もまた、「守るお金」の運用には不適当な商品であることが多いのも分かっていただけたでしょうか。
判断が容易ではない「企業の信用リスク」
それでは、「守るお金」で国内の社債を買うのはどうでしょうか。
結論から言うと、あまりおすすめできません。社債は、企業が発行する債券です。これまで社債の多くは、機関投資家向けに販売されてきました。これは、まとまったお金を調達するには、個人よりも機関投資家のほうが効率的だからです。
機関投資家とは、投資を専門とする会社や生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、投資信託会社など、金融のプロの投資家のことです。
近年は、こうした機関投資家向けの社債以外に、個人向け社債も発行されるようになり、個人でも社債が買えるようになりました。預金や国債などに比べると金利が高いため、人気もあるようです。
社債を買うには、株式を買うのと同様に、その企業の財務内容をよく知る必要があります。いわゆる企業分析をする必要があるのです。企業会計の知識があり、企業分析を行って、その企業の信用リスクが低いと判断できるなら、買ってもいいと思います。あるいは格付けを参考にする必要があります。けれども、多くの人にはなかなか難しいのではないでしょうか。これがおすすめできない理由の一つ目。
二つ目の理由は、「なぜ個人向けに社債を発行するのか」を考えると見えてきます。なぜでしょうか。
必ずそうだとは言いませんが、信用リスクが高く、企業分析能力の高い機関投資家には、それに見合う金利ではないと判断されて社債を買ってもらえないから、個人向けの社債を販売している可能性があります。
しかも、現在はマイナス金利で企業は低金利でお金を借りやすい環境です。それなのにわざわざそれなりの金利の付いた社債を個人向けに発行するということは・・・。
やはり、信用リスクの点でおすすめできません。
日本の社債に投資する投資信託もありますが、買うときの手数料、もっているあいだ毎年かかる手数料、売るときの手数料を考えると、リスクほどリターンが期待できないというのが私の考えです。「守るお金」を運用するのに、わざわざ日本の社債に投資する投資信託を買うメリットはあまりないと思います。