様々な購入案件を把握し、物件を見る目を鍛える
前回の続きです。Tさんが参加した物件見学ツアーでは、前回のツアーで購入した方の「購入直後物件」、いわゆるビフォー物件、前々回に売り物件だった「工事中物件」、さらに以前に紹介されていた「完成物件」といった具合に、時系列で物件のステータスが変異していく様を見てもらいました。
たとえば、Tさんが3カ月前に参加した物件見学ツアーで見ていた物件が、すでに「完成物件」になっていたり、その翌月の物件見学ツアーでは「入居決定物件」になっているといった具合です。
そうすると、実際には自分で買っていない物件なのですが、先輩のプランナーの方が購入、リフォームし、客付け(※1)をした物件として、「いくらで買ったのか?」「工事費はいくらなのか?」「最終的にいくらの家賃、利回りになったのか?」を俯瞰することができるのです。
(※1)客付け……入居付けと同意。売買の場合は購入者を指す場合がある。
この体験を通じて、Tさんは4回目の物件見学ツアー参加の際には、合計で30軒ほどのさまざまな事例を、資料や写真でだけではなく実際に現地に行って、中に入って、触れて確認していますので目が肥えている状態となっています。
4回目の物件見学ツアー終了時には、「次に参加させてもらう時は、いい物件があれば買います」と自信に満ちた表情になっていました。そして、5回目に参加した際には実際に買付証明書(※2)を提出し、物件を購入したのです。
(※2)買付証明書……売主と買主の間に住宅・不動産業者などを介する取引の場合、まずは自分のほうから、不動産物件の売主に対して購入希望の意思表示をする書類。
1回目に参加した時は不安が多かったものが、回数をこなし、さまざまな事例を確認(経験)することによって、不安以上に期待を持って行動することができるようになるわけです。
物件が高いほどリフォーム費用は安く、利回りも高い
全古協では、物件を購入することになった皆さんに事例共有をお願いしており、その点も団体で活動している利点になっています。
Tさんは、何度か物件見学ツアーに参加するにつれて、より具体的に空き家・古家再生投資をやってみようという気持ちを強く持っていきました。また、そうした過程で資金的な面でも相談するようになりました。
手持ちの資金は500万円。戸建てに限らず、不動産の場合は融資を利用してレバレッジを利かせることも利点ですが、投資初期であること、築40年以上のボロ家を対象とすることで物件購入時に融資を得がたい点や、融資特約(※3)での買付の申し込みが購入交渉時のネックになることが多々あります。
(※3)融資特約……融資が不可の場合は、不動産売買契約書を白紙に戻しましょうという特約。白紙解約なので契約時に支払っている手付金や仲介手数料も戻ってくる。
それゆえに、物件自体は手持ちの現金で購入しなければならないこと、とはいえ、リフォームにおいては融資を利用できる可能性があることなど過去の事例を交えながらお伝えしました。
ただそうなると、たとえば400万円の物件を1棟買うと、リフォームで融資を利用したとしても、当面は1棟の物件購入しかできないということになります。Tさんは初期の段階で2棟の購入を目指したいと言っておりましたので、「それならば、物件の状態はより損傷が大きいですが、安価で手に入れられる物件に対象を絞る」ということになりました。
家賃からの逆算になりますが、全古協の関東支部がメインで活動しているエリアでは、家賃が6万円前後という場合が多く、総額(物件購入費+リフォーム代金)が600万円以内でなければ、12%以上の利回りは望めません。
ここでいう400~500万円という高い水準で購入する物件は、その分状態も比較的ダメージが少ないので安価なリフォームで仕上げることができます。
逆に100万円台などの安価な価格帯で購入できる物件は、ダメージも大きく、リフォーム費用が多くかかることになります。物件を400万円で買って100万円のリフォームを行うとなると1棟しか取得できませんが、200万円の物件を買って、300万円のリフォーム費用を融資でまかなうことにより、手元に300万円を残すことができます。
Tさんは、最初に250万円の物件を購入し、300万円のリフォームは融資を受けてその中でまかないました。そして、最初の1棟目の入居付けができたのちに、ほどなくして次の物件をまた250万円で購入し、300万円のリフォームも再度融資を受けることができました。
結果としては、500万円の手持ち資金で月額約12万円の家賃収入を得ることができたのです。
最初の物件の入居付けが終わった際、Tさんからこんな声をいただきました。
「最初の家賃の入金がありました。初めて全古協さんのオンライン講座を受けてから1年たたずに収益不動産を保有することができるとは思ってもいませんでした。これからも頑張ります!」
Tさんの経験や事例は、また次の初めて空き家・古家再生投資を考えているプランナーの糧となっています。