▲トップへ戻る
M&A等による「第三者への事業の引継ぎ」の手法と留意点

今回は、M&A等による「第三者への事業の引継ぎ」の手法と留意点について説明します。※本連載は、島津会計税理士法人東京事務所長の岸田康雄氏と、事業承継コンサルティング株式会社の取締役である村上章氏による共著、『図解でわかる 中小企業庁「事業承継ガイドライン」完全解説』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋し、中小企業庁によって策定された「事業承継ガイドライン」を分かりやすく読み解き、「事業承継」の重要性について詳しく探ります。

近年増加する、M&Aや社外の第三者による事業承継

【1】 事業譲渡と株式譲渡

 

近年、M&A等による事業承継、社外の第三者への事業承継が増えてきています。事業を第三者(個人、会社)へ引継ぐ方法は「譲渡」です。すなわち、会社の場合は株式譲渡又は事業譲渡、個人の場合は事業譲渡によって引継ぐことになります。

 

ただし、会社を対象とする場合、会社法上に定められる「組織再編」の手続きを併せて実行するケースがあります。例えば、複数の事業を営んでいる会社が、その中の一つの事業だけを第三者に引継ごうとするケースでは、会社分割が行われます。

 

また、株式譲渡と同時に、法人(会社)である買い手が、対象会社を一気に吸収して統合しようとするケースでは、合併が行われます。これらの組織再編は、事業引継ぎの方法ではありませんが、会社組織の組み換えに有効です。

 

組織再編まで含めて「事業承継の手法」として解説されているケースが多いようですが、組織再編と事業承継は全く異なるものですので、誤解しないように注意しましょう。

 

 

 

事業承継に際して事業を社外に引き継ぐ場合、用いられる譲渡スキームとして、以下のものが想定されます。

 

●会社の株式を他の会社に譲渡する方法(子会社化)

●株式を他の個人に譲渡する方法

●会社の事業を他の会社に譲渡する方法

●個人事業主の事業を他の個人事業主に譲渡する方法

 

すなわち、社外への引継ぎには、株式譲渡(①、②)と事業譲渡(③、④)という二つの譲渡スキームが用いられることが一般的でしょう。

 

まず、株式譲渡とは、現経営者が所有している株式を第三者(後継者)に売却する手法のことです。この場合、売り手企業の株主が現経営者から買い手である第三者に変わるのみで、従業員との雇用関係や取引先・金融機関との契約関係等には変動がないため、事業承継後も円滑に事業を継続しやすいという利点があります。

 

ただし、簿外債務や現経営者が認識していない偶発債務等も含めて承継される点や、株式の売却価格が時価と比較して著しく低い場合、時価で売却されたとみなされて譲渡所得課税を受けるおそれがある点(みなし譲渡)等には留意すべきでしょう。

 

次に、事業譲渡とは、会社や個人事業主の事業全体を売却(主として対価は現金)する手法のことです。 個別の資産ではなく、工場や機械等に加えてノウハウや知的財産権、顧客など、事業を成り立たせるために必要な要素を対象とする。株式譲渡と異なり、譲渡する対象資産等を特定することとなるため、買手にとっては予期せぬ簿外債務等を承継するリスクを低減することができます。

 

なお、事業譲渡の手法は、例えば個人事業主が、起業家を後継者候補として、個人財産や知的資産等を承継する(個人への引継ぎ)際にも有効です。

 

事業譲渡を行う場合、事業の一部譲渡を行うことも想定できます。すなわち、会社が行っている事業全体のうち、個別の事業を売却(主として対価は現金)する手法です。

 

従業員との雇用関係や買い手にとって不要な資産は引き取ってもらうことができない場合も生じた場合、譲渡の対象資産が選別されることにより、譲渡を実現させることが可能となります。他方で、買い手の見つかりやすい事業・資産を選別することや、現経営者が手元に残したい事業・資産を選別することが可能となるため、柔軟性の高い手法となります。

 

ただし、譲渡しなかった部分は現経営者の手元に残ることとなるため、事業の全体の承継が完了するわけではない点に留意が必要でしょう。

株式交換、合併、会社分割・・・組織再編の具体的な方法

【2】 譲渡に伴う組織再編(広義のM&A)

 

一般的に「M&A」とは、企業の合併と買収のことを言い、事業承継などに起因して行われる会社や事業の売却だけでなく、グループ会社の組織再編のことも意味しています。

 

それゆえ、M&Aは広義において、譲渡と組織再編の両方です。この点、事業承継において行われるM&Aは、経営権の移転ですから、無償の場合もあるかもしれませんが、基本的に有償の譲渡ということになります。

 

しかし、譲渡に伴って、組織再編が行われることが多く見られます。これらの組織再編は、事業承継を目的とするものではありませんから、現経営者は会社経営から完全に離脱することができず、別途株式譲渡等の手法によって事業承継を完了させる必要があります

 

組織再編の一つは、株式交換です。これは、自社の株式と他社の株式を交換する手法です。株式交換を行うことで二つの会社が完全親子関係を構成することとなるため、株式譲渡と同様、雇用関係や契約関係等は変動しません。

 

株式交換後に存続する会社からすれば、手元資金がない状態でも、金庫株の活用や新株の発行により他社を傘下に収めることができるという利点があります。ただし、現経営者にとって株式承継を完了させることができないという点に注意しましょう。

 

また、組織再編の方法として、合併があります。これは、会社の全資産・負債、従業員等を全て他の会社(合併存続会社)と統合する手法です。例えば吸収合併の場合、売手の企業(吸収合併消滅会社)は吸収合併存続会社に吸収されることとなります。これも、株式交換と同様に、現経営者にとって株式承継を完了させることができないという点に注意しましょう。

 

さらに、組織再編の方法として、会社分割があります。これは、複数の事業部門を持つ会社等が、その一部を切り出してこれを他の会社に売却する手法です。

 

例えば、食品の製造・販売を行なっている会社が、特定の事業に組み込まれている貸地、貸家、マンションなどの不動産を手元に残し、食品部門を他に売却するようなことも可能となります。

 

このように、買い手の見つかりやすい事業を分割対象にすることや、現経営者が手元に残したい事業を選別することなどが可能となります。この方法は、吸収分割であれば、対象会社がその子会社の株式を所有することになり、現経営者にとって株式承継を完了させることができないという点に注意しましょう。

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

一橋大学大学院商学研究科修了(会計学及び経営学修士)。 国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)、公認会計士、税理士、中小企業診断士、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。
中央青山監査法人(PricewaterhouseCoopers)にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門(不動産投資)、SMBC日興証券企業情報本部(中小企業オーナー向け事業承継コンサルティング業務)、みずほ証券グローバル投資銀行部門(M&Aアドバイザリー業務)に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://jigyohikitsugi.com/

著者紹介

事業承継コンサルティング株式会社 取締役 経営コンサルティング部長

中小企業診断士、行政書士。台東区役所、東京商工会議所等の経営相談員や専門家派遣など各種公的機関の要職に就く一方で、小売業・流通業を対象として、長年にわたり中小企業の老舗企業の経営コンサルティングを行っている。現在、事業承継の専門家として、顧客網や営業基盤の分析とその引継ぎ、後継者育成と事業戦略・経営計画策定などの経営面からの支援を専門とする。

著者紹介

連載中小企業経営者必読! 中小企業庁「事業承継ガイドライン」の完全解説

本連載は、『図解でわかる 中小企業「事業承継ガイドライン」完全解説』(ロギカ書房)を一部抜粋し、加筆・再編集したものです。

 

図解でわかる 中小企業庁「事業承継ガイドライン」完全解説

図解でわかる 中小企業庁「事業承継ガイドライン」完全解説

岸田 康雄,村上 章

ロギカ書房

60歳を超えた中小企業経営者が事業承継を考えるための教科書! 「銀行から持株会社の提案を受けたけど、それが本当に最適な方法なのか?」 本書を読めば、事業承継に関するあなたの疑問をすべて解決できます。

 

海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年8月版)

~香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年8月版)

講師 長谷川建一氏
日時 2018年08月23日(木)
内容

・米国経済の実体と金融政策の動向は?

・トランプ政権は政策発動に行き着くのか?そしてマーケットへの影響は?

・英国のEU離脱交渉、マクロン大統領誕生でEU経済は?

・アジアシフトは続くか?中国・インド経済の現状は?

・為替、株式、債券マーケットの具体的な展望とは?

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

​「香港」をゲートウエイにした国際分散投資&本格的アジア投資の進め方

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

講師 長谷川建一氏
日時 2018年08月23日(木)
内容

・高手数料&規制強化でコスト効率が極めて悪い日本国内で行う国際分散投資

・運用資産は200兆円超。世界中の投資家が集まる香港金融界の最新事情

・世界トップ級の金融プロフェッショナルが香港で運用成績を競い合う理由とは?

・グローバル投資のゲートウエイとしてなぜ「香港が最適」なのか?

・「香港」からのアクセスの優位性が際立つアジアへの本格投資

・香港の通称「仮想銀行ライセンス」の最新事情

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

現地銀行幹部が語る「香港」における仮想通貨&ブロックチェーンの最新事情

~仮想通貨やブロックチェーン、フィンテック初心者にも分かりやすく解説!

講師 長谷川建一氏
日時 2018年08月30日(木)
内容

・仮想通貨、ブロックチェーン、フィンテックによって

 世界の金融業界と香港の投資環境がどう変わっているのか?

・投資対象や資産クラスとしての仮想通貨をどうみるか?

 フィンテック×香港投資環境変化の具体的な事例

・香港における仮想通貨、ICO等の最新事情とこれからの展望

・香港と日本それぞれの当局の動きと今後の展開

・通称「仮想銀行ライセンス」の最新事情

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年9月版)

~香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年9月版)

講師 長谷川建一氏
日時 2018年09月29日(土)
内容

・米国経済の実体と金融政策の動向は?

・トランプ政権は政策発動に行き着くのか?そしてマーケットへの影響は?

・英国のEU離脱交渉、マクロン大統領誕生でEU経済は?

・アジアシフトは続くか?中国・インド経済の現状は?

・為替、株式、債券マーケットの具体的な展望とは?

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

​「香港」をゲートウエイにした国際分散投資&本格的アジア投資の進め方

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

講師 長谷川建一氏
日時 2018年09月29日(土)
内容

・高手数料&規制強化でコスト効率が極めて悪い日本国内で行う国際分散投資

・運用資産は200兆円超。世界中の投資家が集まる香港金融界の最新事情

・世界トップ級の金融プロフェッショナルが香港で運用成績を競い合う理由とは?

・グローバル投資のゲートウエイとしてなぜ「香港が最適」なのか?

・「香港」からのアクセスの優位性が際立つアジアへの本格投資

・香港の通称「仮想銀行ライセンス」の最新事情

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
不動産活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

講師 平野準氏
日時 2018年12月08日(土)
内容

・不動産投資先としての「京都の町家」とは?

・「京都の町家」投資で償却メリットが狙える理由

・町家投資を成功に導く入口&出口戦略のポイント

・1000万円以下も多数!狙い目となる物件の具体例

 

京町家が高い希少性を持つ理由

1.町家は、現代の建築物ではないので、新しく生産出来ない建物。

2.京都市内は建築物の高さ制限があり、高層マンションが存在しない。

3.投資対象となる地域は京都市内の旧市街で、5キロ×5キロメートルの範囲。

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年8月版)

~香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年8月版)

講師 長谷川建一氏
日時 2018年08月23日(木)
内容

・米国経済の実体と金融政策の動向は?

・トランプ政権は政策発動に行き着くのか?そしてマーケットへの影響は?

・英国のEU離脱交渉、マクロン大統領誕生でEU経済は?

・アジアシフトは続くか?中国・インド経済の現状は?

・為替、株式、債券マーケットの具体的な展望とは?

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

​「香港」をゲートウエイにした国際分散投資&本格的アジア投資の進め方

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

講師 長谷川建一氏
日時 2018年08月23日(木)
内容

・高手数料&規制強化でコスト効率が極めて悪い日本国内で行う国際分散投資

・運用資産は200兆円超。世界中の投資家が集まる香港金融界の最新事情

・世界トップ級の金融プロフェッショナルが香港で運用成績を競い合う理由とは?

・グローバル投資のゲートウエイとしてなぜ「香港が最適」なのか?

・「香港」からのアクセスの優位性が際立つアジアへの本格投資

・香港の通称「仮想銀行ライセンス」の最新事情

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

現地銀行幹部が語る「香港」における仮想通貨&ブロックチェーンの最新事情

~仮想通貨やブロックチェーン、フィンテック初心者にも分かりやすく解説!

講師 長谷川建一氏
日時 2018年08月30日(木)
内容

・仮想通貨、ブロックチェーン、フィンテックによって

 世界の金融業界と香港の投資環境がどう変わっているのか?

・投資対象や資産クラスとしての仮想通貨をどうみるか?

 フィンテック×香港投資環境変化の具体的な事例

・香港における仮想通貨、ICO等の最新事情とこれからの展望

・香港と日本それぞれの当局の動きと今後の展開

・通称「仮想銀行ライセンス」の最新事情

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年9月版)

~香港の銀行幹部による国際投資マーケットの最新展望(2018年9月版)

講師 長谷川建一氏
日時 2018年09月29日(土)
内容

・米国経済の実体と金融政策の動向は?

・トランプ政権は政策発動に行き着くのか?そしてマーケットへの影響は?

・英国のEU離脱交渉、マクロン大統領誕生でEU経済は?

・アジアシフトは続くか?中国・インド経済の現状は?

・為替、株式、債券マーケットの具体的な展望とは?

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
海外活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

​「香港」をゲートウエイにした国際分散投資&本格的アジア投資の進め方

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

講師 長谷川建一氏
日時 2018年09月29日(土)
内容

・高手数料&規制強化でコスト効率が極めて悪い日本国内で行う国際分散投資

・運用資産は200兆円超。世界中の投資家が集まる香港金融界の最新事情

・世界トップ級の金融プロフェッショナルが香港で運用成績を競い合う理由とは?

・グローバル投資のゲートウエイとしてなぜ「香港が最適」なのか?

・「香港」からのアクセスの優位性が際立つアジアへの本格投資

・香港の通称「仮想銀行ライセンス」の最新事情

 

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
不動産活用セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

講師 平野準氏
日時 2018年12月08日(土)
内容

・不動産投資先としての「京都の町家」とは?

・「京都の町家」投資で償却メリットが狙える理由

・町家投資を成功に導く入口&出口戦略のポイント

・1000万円以下も多数!狙い目となる物件の具体例

 

京町家が高い希少性を持つ理由

1.町家は、現代の建築物ではないので、新しく生産出来ない建物。

2.京都市内は建築物の高さ制限があり、高層マンションが存在しない。

3.投資対象となる地域は京都市内の旧市街で、5キロ×5キロメートルの範囲。

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧