被害者が不利になりがちな交通事故裁判…裁判所と裁判官の現実

前回は、裁判所における交通事故裁判で、自賠責の判断が重要視される理由を取り上げました。今回は、被害者に不利な交通事故裁判が増える原因とも言える、裁判所と裁判官の問題を見ていきます。

被害者を「悪者」のように扱う裁判官が増えている!?

前回の続きです。

 

このような裁判所の矛盾やいい加減さは、近年特に顕著になってきていると感じている。もちろん中には被害者の立場に立って親身に対応する裁判官も存在する。しかしそれは非常に少なく、むしろ賠償金を過剰にせしめようとしている悪者のように被害者を扱い、冷淡で酷な判決や和解を提示する裁判官が増えている。

 

交通事故事件などのような細かい事件は興味がなく面倒だからと、まともに向き合ってくれない裁判官も多いし、和解に応じなければ判決はもっと不利になるぞと明確に態度に出す裁判官も多いのが実態である。なお、和解とは、裁判がある程度進んだ段階で、暫定的に裁判官が現在の考えを示し、双方が納得すれば判決までいく前に裁判が終了する、裁判官が仲裁する訴訟における示談のようなものである。

 

いずれにしても全体に感じるのは、ここ数年特に裁判所と裁判官の劣化が進んでいるということだ。増え続ける訴訟で裁判官自身がオーバーワークになっていると指摘もあるが、裁判所の役割と可能性を考えると、あまりにも現実とのギャップにがく然としてしまうことも多いのである。

 

「事件を早く終わらせたい」・・・裁判所の魂胆が丸見え

以下にその例を挙げてみよう。

 

Aさん(20歳代女性)がバイク、加害者がトラックでの事故。バイクがトラックを追い越した直後に、バイクがバランスを失って転倒。トラックがそれに乗り上げ100メートル引きずってバイクが炎上した事案である。この事故でAさんは下肢切断、下半身不随、全身火傷の重傷を負った。加害者は自分に過失はないと主張、物損を賠償するように被害者に請求した。

 

我々は反訴の意向であると裁判所に伝えたところ「やるならやってもいいけれど、どうやって相手の過失を立証するの?」という発言。人身事故については過失の立証責任が自賠法により転換されており、加害者側が過失のないことを立証しなくてはならないとされている。

 

この件の場合はトラックの運転手のほうが自分に過失がないことを証明しなければならない。それにもかかわらずこの発言である。とにかく事件を早く終わらせたいという裁判所の魂胆が丸見えである。

 

本連載は、2015年12月21日刊行の書籍『虚像のトライアングル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載虚像のトライアングル~交通事故賠償の闇

弁護士法人サリュ 代表
弁護士 

昭和52年、埼玉県生まれ。中央大学法学部卒業後、平成18年弁護士登録時より弁護士法人サリュに在籍。「われわれにしかできないことがある。そのために強くあれ。戦え。」というサリュの精神の薫陶を受ける。数多くの交通事故被害者の事件を手がけてきたが、依頼者を救うには制度そのものと対峙しなければならないと気付き、交通事故における障害者差別訴訟では画期的な勝訴を勝ち取るなど実績を残す。平成26年より同法人の2代目の代表に就任。「流されない、見失わない」法律事務所を作るため全国7事務所の弁護士とリーガルスタッフを束ね、日々邁進している。

著者紹介

虚像のトライアングル

虚像のトライアングル

平岡 将人

幻冬舎メディアコンサルティング

自賠責保険が誕生し、我が国の自動車保険の体制が生まれて約60年、損害保険会社と国、そして裁判所というトライアングルが交通事故被害者の救済の形を作り上げ、被害者救済に貢献してきたが、現在、その完成された構図の中で各…

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