上げ相場でも下げ相場でもリターンを取りにいく
投資できる資産が1億円を超えるような富裕層が好んで投資する「ヘッジファンド」とは、どんな仕組みの投資商品なのでしょうか。通常の投資信託とはどこが異なるのでしょうか。募集形式の違いなどありますが、通常の投資信託と大きく異なる点は「上げ相場でも下げ相場でも、利益を出すことを目標に運用するファンド(投資信託)であること」です。これが、守るべき保有資産の多い富裕層の支持を得ている理由のひとつといっていいでしょう。
一般的な投資信託が株式市場などで運用する場合、ほとんどが「買い」を中心にした運用をします。現在のような、上げ相場では利益が出ますが、下げ相場に転じてしまうと運用益は得られなくなってしまいます。
その点、ヘッジファンドの大半は、将来的に株価が下落すると予想したときには、「空売り」を積極的に行います。先に売って、後で買い戻して利益を出す空売り戦略を日常的な投資戦略のひとつとしているのです。マーケット用語で買いとは「ロング」、売りは「ショート」と呼ぶために、こうした買いと売りの両方を駆使した投資方法を「ロング・ショート」と呼びます。
こうした運用法を採用することで、ヘッジファンドは収益機会を逃すことなく、機動的にリターンをとりにいくことができるわけです。まさに「上げ相場でも下げ相場でも利益を出す」運用方法といえるのです。
「マーケット・ニュートラル」の投資戦略とは?
たとえば、「マーケット・ニュートラル」と呼ばれる投資戦略は、マーケット(市場)に対して常にニュートラル(中立)となるように投資するストラテジー(戦略)です。詳細は後述しますが、たとえば同じ電気業界でA社は割高、B社は割安だと判断します。通常の投資信託の戦略では、B社の割安な銘柄に投資します。投資してしまえば、後は株価が上がるのを待つだけです。
しかし、マーケット・ニュートラルではB社を買うと同時に、割高になっていると判断されるA社を空売りしておきます。こうすれば、相場全体が下がったときには当然買ったB社は下落しますが、A社は割高な分だけさらに大きく下落することになります。また、相場全体が上がったときには買ったB社は大きく上昇して、割高だったA社はB社より上昇しないことになります。つまり、相場が下落しても上昇しても一定の収益を見込める仕組みです。
ここで重要なのは、相場全体の方向性よりも、A社とB社の相対的な割高・割安を十分に精査したうえで銘柄選定することです。