両者ともに印象派の手法「筆触分割」を使用するが・・・
ルノワールは、日本でも大変愛されている画家です。
印象派といえばモネとルノワールの名前が挙がるほど有名な二人ですが、光あふれる戸外の風景を中心に描き続けたモネに比べると、ルノワールは人物画、しかも女性を描き続けた画家として有名です。
実は、モネとルノワールは年が1歳しか違わず(ルノワールが年下)、一緒に住んだり、一緒に絵を描きに出かけたりしたほど仲がいいのです。
たとえば、1869年にはパリ郊外の水浴場ラ・グルヌイエール(蛙の棲家)で、二人でイーゼルを並べてほとんど同じ構図の絵を描いています。当時、モネは29歳、ルノワールは28歳でした。
この2枚の絵には、印象派の代表的な手法である筆触分割が使われています。筆触分割とは、パレットの上で色を混ぜ合わせず、絵具の色をそのままキャンバスに乗せていき、遠くから眺めると色が混ざっているように見える視覚効果を利用した表現手法です。
印象派が筆触分割の手法を採ったのは、油絵具は混ぜていくとどんどん濁って暗い色になる傾向があったからです。明るい戸外の風景を描きたかった印象派は、絵具を混ぜずに、筆のタッチでさまざまな色を表現しました。そのため、印象派の絵は近くで見ると粗く感じるのです。
「風景画のモネ」「人物画のルノワール」
また、同じような絵を描いても、モネは水面の光りの反射などをよく見ていて、ルノワールはどちらかといえば人物を描き込んでいることがわかります。風景画のモネと人物画のルノワールの違いは、この頃から際立っています。
モネとルノワールの出会いは、スイス人画家シャルル・グレールの画塾におけるものでした。モネは22歳、ルノワールは21歳でした。同じクラスにはシスレー(23歳)やバジール(21歳)といった、後に印象派のグループを結成する仲間がいて交流が始まります。
グレール自身は古典的な絵画を描く画家でしたが、生徒の個性を尊重して、描きたいように描かせる指導方法を採っていたようです。そのため、既成の絵画に飽き足らない、やんちゃな若者が集まったのでしょう。