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高い教養と激しい個性…芸術家・ゴッホの人生を辿る②

前回に引き続き、ゴッホの人生を紹介します。今回は、ゴッホが画家になることを決意しながら、商業的に評価されず、苦しんでいた時代までを見ていきましょう。

22歳で職を失い、牧師や伝道師への道を志すが…

前回の続きです。

 

1875年、度重なる無断欠勤でとうとうクビにされた22歳のゴッホは、イギリスの寄宿学校の教師という職を得ますが、それにも満足することはできませんでした。貧困層の生徒が多い学校で社会の矛盾を知ったゴッホは、貧しい人々に光をもたらしたいと願い、父のような牧師になることを望むようになります。

 

1877年、熱にうかされたように聖書ばかり読んでいた24歳のゴッホは、仕事を辞めて実家に戻ります。国家試験を受けて大学に入学し、牧師になるための勉強を開始することにしたのです。今回もゴッホの親族は一致団結して、家庭教師を雇ってこの若者の夢を応援しますが、ギリシャ語とラテン語の文法が難しく、結局試験に落ちてしまいます。

 

ゴッホ自身も宗教的情熱とは無縁の勉強に嫌気がさして、神学大学への道を諦めます。そして次に選んだのが、ベルギーの伝道師でした。より民衆に近い立場で神の言葉を説く伝道師は、牧師よりも勉強が簡単だったからです。

 

しかし、ゴッホは伝道師の養成学校でも失敗します。仲間と協調せずに自分の正義ばかりを主張するゴッホは、教会という組織に向いていなかったのです。伝道師の資格も得られなかったゴッホですが、その情熱はやみがたく、貧しい炭坑町ボリナージュで勝手に神の言葉を説き始めます。それを聞いたベルギーの伝道委員会がゴッホを試験的に伝道師に任命してくれたことで、長年の夢が叶います。

 

ついに伝道師資格を得たゴッホは、医者も見放した重病人の看護に力を尽くしたり、貧しい人に持ち物や服を与えたりと献身的に働きます。しかし、自らの身なりすら顧みないその行状があまりにも不気味だと判断されて、6カ月の試験期間が過ぎた時点で伝道委員会に解雇されてしまいます。

 

失意の底に落ち込むゴッホの慰めになってくれたのが絵画でした。もともと子どもの頃から絵を描くことが好きで、社会人になってからもデッサンを続けていたゴッホでしたが、家庭環境のせいか画家という不安定な職業を目指したことはありませんでした。しかし、何もかも失敗したゴッホが情熱を打ち込めるものは、もはや絵しかなかったのです。

画家の道を決心するも評価は得られず・・・

ゴッホが画家になろうと決心したのは、1880年、27歳の時です。ベルギーで画家修業を始めたゴッホは、わずかな仕送りのほとんどを画材につぎ込み、いつもの狂気じみた情熱で絵に打ち込みます。

 

翌1881年、実家に戻ったゴッホは家族から温かく迎えられます。何はともあれ進むべき道を見いだした息子に、両親は支援を惜しみませんでした。

 

しかし、ここでもゴッホの情熱が問題を引き起こします。夫を亡くして子連れで実家に戻っていた7歳年上の従姉のケイに恋をしたゴッホは、拒絶されてもそれを受け入れることができなかったのです。伯父の家に行き、ランプの炎に手を突っ込んで「娘さんに会わせてください」と脅迫します。もちろん、この恋が実ることもありませんでした。

 

傷心のゴッホは再び自暴自棄になり、両親と喧嘩して家を飛び出します。そして、やり場のない愛情を街で出会った一人の女性に注ぎ込みます。それが3歳年上の子連れで妊娠中の貧しい売春婦シーンでした。ゴッホはシーンとその5歳の娘と同棲し、彼女や彼女の周囲の貧しい人々を数多くスケッチしました。その間、ゴッホの生活費をまかなったのは、画商として成功しつつあった弟のテオでした。以降テオは、ゴッホが死ぬまで生活費の面倒を見ています。

 

ゴッホとシーンとの共同生活は1年しか続きませんでした。稼ぎのないゴッホに対してシーンもつらくあたり始め、ゴッホもシーンのために画家を諦めて正業を探そうとはしなかったからです。

 

ゴッホは再び実家へ戻り、アトリエとして一室を与えられ、また絵を描くことに集中します。しかし、女性との恋愛問題や父との確執はここでも再燃し、1885年、父の死をきっかけに一人暮らしに戻ります。画家になると決めてから5年、35歳のゴッホは、商業的にはもちろん、批評的にもまったく評価されませんでした。

株式会社ブリュッケ 代表取締役

1961年愛媛県生まれ。多摩美術大学に進学後、美術大学で彫刻を専攻する過程で、人々の生活に溶け込む平面表現の魅力に目覚め、絵画の世界へ転向。卒業後、都内の画廊での修行を経て、1990年に独立。東京・銀座に、故郷の秀峰の名を冠した「翠波画廊」をオープンさせる。以降26年の長きにわたり、ピカソ、マティス、藤田嗣治、ユトリロ、ローランサン等、絵画愛好家なら誰もが知っている巨匠の作品を数多く扱う。特に20世紀初頭に活躍したフランス近代の画家に造詣が深い。
翠波画廊https://www.suiha.co.jp/

著者紹介

連載モネ、ゴッホ、ルノワール・・・「値段」から読み解くフランス近代絵画

 

 

「値段」で読み解く 魅惑のフランス近代絵画

「値段」で読み解く 魅惑のフランス近代絵画

髙橋 芳郎

幻冬舎メディアコンサルティング

ゴッホ、ピカソ、セザンヌ、ルノワール、ゴーギャン、モディリアーニ…“あの巨匠”の作品に、数十万円で買えるものがある!? 値付けの秘密を知り尽くしたベテラン画商が、フランス近代絵画の“新しい見方”を指南。作品の「値…

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