スケールメリットを求めて再編が進む「人材関連業界」
前回に引き続き、今もっとも再編が活発化する9つの注目の業界について見ていきます。
【人材紹介・人材派遣業界】
人材紹介・人材派遣業界は小資本で起業しやすいため、企業の数が多いのが特徴です。産業としての歴史は浅く、2008年のリーマンショック時には、派遣先の企業が人材を必要としなくなり、多くの「派遣切り」にあったため各社苦境に立たされたという経緯があります。
一方、近年ではアベノミクス効果で景気は良くても、今後は若者人口が急速に減少していくため人材の獲得コストが急上昇しています。人材紹介・人材派遣業界は人材の登録をインターネットに頼っており、ネット広告への支出が大きいことで有名です。景気が良い時期はどの会社も「良い人材ならひとりでも多く欲しい」といった状態になるため、紹介できる人材をとにかく獲得したいのです。事業規模が大きくなれば、紹介先や派遣先の件数が増え、登録する人材にメリットがあるため各社とも規模の拡大を進めている状況です。
特に、大手企業の子会社の人材派遣企業の切り離しや、製造業やIT業界など業界に特化した中小・中堅の人材紹介・人材派遣会社の買収が盛んに行われています。
「物流業界」では生き残りをかけた再編が加速
【物流業界】
物流業界は国内市場の縮小、規制緩和による事業者増加に伴う過当競争、値下げ競争、燃料費の高騰などマイナス要因も多く、生き残りをかけた再編が活発に行われています。
現在の物流業界のキーワードは3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)です。3PLとは、荷主に対して配送・在庫管理やシステム構築などの物流業務を包括して受託し、遂行する物流改革のことで、物流コストの削減や業務の効率化のために選択する企業が増えています。しかし、3PLサービスは大手物流会社でなければ提案が難しいため再編が加速しているのです。
また、IT企業のM&Aと同様に大手企業の子会社や部門の切り離しが活発になっています。日立物流は、2011年4月に自動車部品物流のバンテックを買収した案件が有名ですが、それ以外にも資生堂や内田洋行など大手企業の物流部門や物流子会社の買収を積極的に実施しています。日本通運も同様に、パナソニックなど大手企業の物流子会社の買収を進めています。