縮小する業界の中では、M&Aによる顧客の獲得が有効
日本の産業は、ゆるやかに、そして確実に変革の時を迎えています。そのキーワードとなるのが「人口減少」と「グローバル化」です。
日本の人口は2010年の1億2806万人をピークに減少を始め、2030年には1億1662万人に、2060年には8674万人まで減少すると推計されています。
人口減少が始まるとともに、労働者の確保も容易でなくなり、右肩上がりの企業は減少していきます。たとえば、飲食店にしても国内にある飲食店の数は飽和状態にあり、その中で、継続的に成長していくことは困難です。こうした環境のもと、拡大するパイを分け合ってきた時代は終わり、縮小するパイを奪い合う時代へと突入しているのです。
縮小する業界の中では、M&Aによる顧客の獲得が有効に働きます。たとえば、マンション管理業界やビルメンテナンス業界は今もっとも再編が活発な業界のひとつですが、マンションやビルの新築件数が減ると、すでに他社が押さえている物件を奪いにいかなければならなくなります。すると、営業コストが高くつくために、M&Aで他社を買収・合併することで新規顧客の獲得を狙っていく動きが有効になってきます。
ビルメンテナンス業界では、たとえば、ビルの清掃メインの会社とビルの機械・器具のメンテナンスの会社が統合すれば高いシナジー効果が期待できます。
人口減少の環境の下、成長が鈍化している市場で勝ち抜いていくためには、経営者にはより高度な経営能力が求められていきます。
日本企業が国際競争力を高めていくには・・・
また、グローバル化の環境では、たとえ国内は閉鎖的な経済環境だといっても、これから日本企業は海外企業と戦っていかなければなりません。同時に外資系企業の日本進出が進んでいる中で日本の企業は勝ち残っていく必要があります。
日本国内のM&A取り引き金額は、GDPに対する比率からするとアメリカなどと比較しても非常に少なく、国内の企業においては、「島国」の中で過当競争を行っていては家電メーカーに代表されるように国際競争力を失っていくだけです。
国内の家電量販店は経営統合が進み、家電メーカーに対する価格支配力が高まりました。しかし、再編が進んでいない家電メーカーは国内のライバル企業に勝つために新規の製品の機能を上げることに躍起になっていきました。消費者のニーズに応えるためでなく、家電量販店の売り場でライバルに勝つための新製品を投入し続けたことで、家電メーカーは利益が圧迫される薄利多売となり、さらには無駄な機能への投資を続けることになってしまったのです。
結果はどうなったでしょうか。ご存知のように日本の家電メーカーは凋落し、アップルやサムスンなどの海外企業はそんな日本企業をしり目に、家電量販店に値引きされない、強い商品、独自の商品を売り出すことに勝機を見出し、業績を大きく伸ばしていったのです。
たとえば日本企業同士が互いにテレビの画質を切磋琢磨して追求しているあいだに、LG電子はイスラム圏でコーランが流れて礼拝の時間を知らせてくれる機能を搭載したテレビを開発販売しています。
日本企業が今後、海外の市場を取り込むためには、国内においてはライバル関係を解消し、業界再編のもとに集約化することで力を合わせて海外に進出していくことが求められています。