新台入替は既存客の「一時的な投資額」を増やすだけ?
B店がジリ貧状態に陥っている最大の問題は、新台入替に代わる集客策が見つからないことにありました。新台入替による集客はすでに破綻しています。たしかに一時的に稼働が増え売上が跳ね上がるものの、すぐに元に戻ってしまうことはすでに多くのパチンコホール関係者が経験しているとおりです。
入替の効果が続かないのは遊技客が増えないからです。稼働や売上が増えるのは既存客が「入替なのだから出るはず」という期待から一時的に投資額を増やしているためであり、新規客を呼び込めているわけではありません。既存客の財布には限界があるので、入替の効果はすぐに薄れてしまうのです。
今後市場に登場する新機種は、より射幸性の低いものばかりなので、入替の効果はさらに薄くなります。ただでさえ弱い新機種の集客力がさらに薄弱になっていくのです。
B店では若い店長がそのことに気付き、営業会議でたびたび取り上げていました。
店長「毎月2回の新台入替がうちの決まりですが、コストに見合う効果が得られていません。漫然とした定期的な入替は抜本的に見直すべきです」
営業部長「そうは言っても入替はホールにとって集客の要じゃないか。私の経験ではどんなに落ち込んだ時だって、入替すれば遊技客が入ったがなあ」
店長「しかし、ジリ貧状態に陥っている今となっては正しいとは思えません」
営業部長「それなら、代わりの集客案が何かあるっていうのかい?」
店長「いえ、それは・・・」
営業部長「入替に集客効果がないと言うけれど、入替をしなかったらどれだけ稼働が下がるか、考えると恐ろしくなるよ」
会議では毎回、こんなやりとりが繰り返されていました。集客効果を感じられないにもかかわらず、ホールではダラダラと定期的な入替を続け、貴重な資金が無駄に費やされていたのです。
長期的な目線で、既存機種に遊技客を付ける取組みを
新台入替に頼らない営業を確立するためには、商売の基本に立ち返るしかありません。市場でもっとも支持されている商品を安値で提供することです。パチンコホールにおいては「海系機種を出し気味で使うこと」がこれに当たります。
B店から相談を受けた私はあらためてこの策を提案しましたが、実は営業部長や店長もこの策の有効性を知っていました。知っていながらできずにいたのです。
B店の経営陣と話している時、よく「競合店は『海』が強いのでうらやましい」という声を耳にしました。客付きを望む気持ちはわかりますが「強いのでうらやましい」という考えは間違いです。競合店は海物語が強いのではなく「強くした」のです。
既存機種を強くするためには長期的な取り組みが欠かせません。「海」を強くしたければ、長期的な取り組みでじっくりと「B店の海は楽しい」という認識を商圏のパチンコファンに浸透させる必要があります。
ただし、この方策の難点はすぐには効果が出ないことです。早くても半年以上、遅ければ年単位で続けなければ「海に遊技客が付いている」という状態にはなりません。そのため、B店でも「今さらやっても・・・」と考え、集客の策として採用されなかったのです。
しかしながら、今後は新機種に魅力がなくなることもあり、ジリ貧ホールでは特に既存の遊技機を大切に使うことが非常に重要となります。そのことを再認識したB店では、長期計画で「海に遊技客を付ける」という取り組みを始め、1年後には安定的な稼働が見込める大きな柱へと成長させました。