お勧めは「1枚の資金繰り表で管理する」方法
では、いずれの業種、事業規模においても必要な「月次資金繰り表」を作成して行きましょう。月次資金繰り表は、資金管理、経営計画の実行・見直し、社外への交渉の資料として『軸』となるものです。月次資金繰り表は、実績を基に通期1年分を基本とします。実績を1枚、通期予定を1枚と、2枚作成し、管理するのがオーソドックスな方法です。
どんな事業規模の経営者であれ、次年度の年商はいくらぐらい、という感覚的な計画は持っているはずです。年次計画をある程度立てているなら、月次資金繰り表は、その進捗を見ながら即時修正に対応できるようにしておいたほうがよいと思います。
そこで、私がお勧めしたいのは、1枚の資金繰り表で管理する方法です。
実績月を基に平均値を算出しながら、次月以降を平均値で通期分各項目を入力して年間実績予測も月次で管理していく方法です。
全項目を平均値で通期分入力する必要はありません。各小計に平均値を入力して通期分を作成すればよいでしょう。この方法なら、直観的に1枚の資金繰り表で、年次計画の利益・経費の達成率を比較でき、方針の修正もしやすくなります。
それでは項目ごとに順次説明していきます。
売上で見るべきポイントは「実入金」
売上では、以下の5利益を意識して作成し、経営計画の実行進捗と見直しが即座にできるようにします。
損益計算書(PL)は、売上として計上するタイミングは業種・会社によって異なります。
[図表]利益
飲食や物販の業種で商品を顧客に提供すると同時に現金で入金される場合は、売上と入金が同時で、損益計算書(PL)の売上と資金繰り表の売上(現金)が一致します。
しかし、飲食や物販でも提供する量(グロス・ロット)が多かったり、定期的になると、顧客は後でまとめて支払うことを希望するようになります。そうすると、提供する側の売上は売掛金となり、損益計算書(PL)の売上と資金繰り表の売上(現金)のタイミングがずれることになります。
また、工業品の受注や、制作会社の受注、建設・建築業の請負は、契約時に売上として計上せず、未製品・未成工事等の仕掛りとなり、納品後・完成引き渡し後に売上を売掛金として計上する場合があります。つまり、着工しても売上として計上するまでタイムラグがあるだけでなく、受注から入金までの期間がとても長くなります。
ポイントは、会計上のPLの数値を見て一喜一憂する必要はなく、実入金を重視しよう、ということです。「会計上の売上」イコール「入金された金額」ではないのです。