太陽光、不動産…急速に増加する中国の「対日投資」
前回の続きです。
さて、日中関係は、どうなっているのか。深まっても浅くならないのが、日中経済関係である。データ(JETRO、外務省等)により、いくつか整理してみよう。
第一に、通関統計で見る中国の二〇一五年における貿易関係――日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国にとって日本は米国に次ぐ第二の貿易相手国(二七八七億ドル)である。中国の輸出相手国(香港、台湾を除く)として日本は、米国に次ぐ第二位(一三五七億ドル)で、中国の輸入相手国として日本は、韓国、米国に次いで第三位(一四三〇億ドル)であり、通関ベースでは中国側が七三億ドルの赤字となっている。
ただし日中貿易については、JETRO「世界貿易投資報告2016年版」にも記載されているとおり、右記「通関ベース」よりも実態に近いと考えられる「双方輸入ベース」(財務省貿易統計と中国税関統計での日中貿易)で見ると、二〇一五年の貿易総額は三〇三三億ドル、中国の対日輸出(日本の輸入)一六〇六億ドル、対日輸入(日本の輸出)一四二七億ドルとなった。その結果、貿易収支は日本側の一七九億ドルの赤字となっている。
第二に、二〇一五年における投資関係――日本の対中投資は、シンガポール、韓国に次いで世界で第三位(香港、台湾を除く)、三二億ドル。前年比二六%減。中国にとっての投資先(香港、台湾を除く)として、日本は第三三位、二・四億ドル(前年比三九%減)。しかし、日本の対中投資は再投資という形でなされており、現実の投資は大きく減っていないようだ。また、中国の対日投資も急速に増えており、かつ、香港、ケイマン諸島経由のものも少なくなく、実態はより大きな投資額となっている可能性もある。分野別には、太陽光発電建設投資、不動産投資や、中国人観光客も見込んだ観光分野への投資等が増えている。中国企業による、精密機械分野における日本の中小企業の買収も進んでいるようだ。
ますます「依存関係」を深める日中
第三に、訪問人口の推移――二〇一五年に、訪日中国人数が訪中日本人数を初めて上回り、ほぼ倍約五〇〇万人となった。訪中日本人数は二〇〇七年の約四〇〇万人がピークで、二〇一五年は約二五〇万人に減少している。二〇一四年には訪中日本人と訪日中国人はほぼ拮抗しており、やや訪中日本人が上回っていた。一年の変化はきわめて大きい。いわゆる爆買いも反映しているようだ。
第四に、人的交流、留学生の推移。二〇一五年時点で、日本への留学生は約二一万人、その半分近くが中国からの留学生だ。近時横ばいにある。日本の対中留学生も増加しており、文部科学省が集計した最新二〇一三年時点では、日本人留学生約五・五万人のうち一・七万人が、中国で学んでいる(文部科学省「文部科学白書」及び独立行政法人日本学生支援機構資料)。
ちなみに、著者書籍『曲がり角に立つ中国――トランプ政権と日中関係のゆくえ』(一九九ページ)で詳述したが、ユネスコ統計では二〇一五年時点で、海外留学生を国別にみると、中国が約八三万人で世界一位、インドが二位(約二三万人)、ドイツが三位(約一二万人)、韓国が四位(約一一万人)となっている。日本人留学生は、約三万人(三三位)である。
これらの動向をどう見るか。日中関係は、相対的にはともかく絶対的には、ますます依存関係を深めている。とりわけ人的交流が深まっているのは、未来永劫の隣国、至極当然のことだ。
この記事は次回に続きます。