「内政干渉はしない」を基本方針の1つに
14年白皮書は、引き続き対外援助を増額し、援助方式や資金効率についてイノベーションを図っていくとした上で、以下の4つの基本方針を掲げている。
①被援助国自身の発展能力を強化
②いかなる政治的条件も付けず、内政干渉はしない。被援助国自ら発展方式を選ぶ権利を尊重
③約束は必ず守る(重信守諾)
④相互尊重、平等(平等相待)、互恵(互利共赢)
中国は特に②を強調し、援助を供与する際に途上国の経済政策に注文を付け、またその政治的ガバナンスも考慮する場合が多い先進国や国際援助機関の援助と一線を画している。この原則は初回白皮書でも同様に強調されており、一貫している。
他方、初回白皮書に基本原則の1つとして明示されていた、中国自身の国情、能力に応じて被援助国のニーズに対応する(量力而行、人力而為)との文言は、14年版では、白皮書冒頭の「南々協力の下で『力所能及』、能力の及ぶ限り他の途上国に援助を提供している」との文言に置き換えられている。
先進国からの批判に対する中国の反論とは?
政治的条件を付けないという中国の原則について、国際社会で以前はあまり議論にならなかったが、2000年代から対アフリカ援助が急増するに伴い、先進国や国際機関が批判を開始、例えば世銀は06年「現地の人権や環境状況を無視している」と批判、同年、英国外相は中国の援助をかつての植民地時代の行動と同一視、米国も中国はアフリカの独裁政治、腐敗を助長させていると批判し始めた。
中国側からすれば、先進国の援助目標は高尚で結構だが、時に傲慢で課される条件は被援助国が受け入れ難いものも多い。国際政治を権力闘争と見なす現実主義派の代表的政治学者モーゲンソーの「援助、外交、軍事、宣伝に大きな差異はなく、いずれも武器庫にあるという点で同じ」との議論を引き合いに、欧米先進国は一貫して援助を国益に服従するものと位置付けてきたとしている。
具体的には、米国については第2次大戦後のマーシャルプラン終了後、また冷戦終了後に援助を縮小させたこと、日本の援助は当初戦後補償の意味合いが強く政治条件はなかったが、次第に日本企業の市場開拓、外交軍事上の手段になったとし、さらに仏など欧州諸国も過去の植民地としての忠誠を維持するため、透明性の低い現地の圧政を援助をしてきたとした上で、中国の条件を課さない援助の「寛容さ」は国際社会の理解を得られるようになったと主張している(参考文献3)。
確かに、欧米先進国の援助も外交手段という側面があることは否定できないが、以下、中国の援助原則が形成されてきた歴史的経緯を振り返ると、中国の場合、そうした側面が際立っている。
中国では、外交部がもっぱら外交的側面から、商務部が効率、採算など経済的側面から対外援助を所管しているが、OECDのカントリーリスク分類に依拠すると、2013〜15年、中国の10大援助国のうち6か国が最もディフォルトリスクが高い国で、世銀の2011〜15年の10大援助国のうち2か国だけが同分類になっているのとは対照的で(16年10月14日付China Economic Review)、援助にあたって商務部より外交部の意向が大きく働いていることが窺える。
<主要参考文献>
1.「中国的对外援助白皮书」国务院新闻办公室、2014年7月、2011年4月
2.「新中国成立后对外援助30年」2014年7月11日付南方网
3.「中西不同方式引评说援外:中国有‘历史厚度’」2014年7月15日付环球时报