一帯一路、AIIBで攻勢を強める中国
資源確保との関係、また近年、「一帯一路」、新シルクロードロード構想に基づくシルクロード沿線諸国の輸送インフラプロジェクトへの支援、これを動かす仕掛けの1つとしてアジアインフラ投資銀行(AIIB)を主導するといった動きから、中国の対外援助の動向が注目されている。
2017年5月、中国は北京で初の一帯一路に関する国際会議「国際協力高峰論壇」を主催し、政策調整、インフラ建設、貿易円滑化、資金支援、文化交流促進の5つの分野で計270項目以上の具体的な成果があったとした(図表1、2)。
[図表1]一帯一路の主要成果と見られているもの
[図表2]一帯一路の主要成果として挙げられている具体例
また会議に合わせ中国商務部が明らかにしたところによると、14〜16年、一帯一路沿線諸国との貿易額は対外貿易全体の伸びを上回り20兆元に、また直接投資は500億ドル、新規建設工事請負契約3049億ドルにのぼった。
17年上期の沿線諸国との貿易額は5115億ドル(前年同期比11.4%増)、貿易全体の27%を占めた。また直接投資は47か国66.1億ドル(前年同期比▼3.6%)、対外投資全体に占めるシェアは前年同期の7.7%から13.7%に上昇、新規建設工事請負契約61か国に対し2431件714.2億ドル(同38.8%増、シェア57.7%)、中国当局が資本流出傾向に歯止めをかけようとする中で対外直接投資全体が前年同期比▼45.8%と大きく減少しているが、一帯一路沿線諸国への投資は相対的には堅調だ。
AIIBの初年度融資実績は9件17億ドルだった(図表3)。17年25億ドル、18年35億ドル、数年以内に年間100億ドル程度の融資を目指すといった幹部発言が伝えられてきたが(16年6月25日付央視財経)、17年3月、金総裁は「17年は16年実績以上になることは確実だが、量より質が重要」と述べるに止まっている(3月20日付財新網)。6月総会でも、目標額の具体的な言及はなかったもようだ。17年は9月までに22件約17.5億ドルを承認(初年度に続き、大半が世銀等との協調融資)、パイプラインが8(うちインド案件が5)ある。
[図表3]AIIB融資プロジェクト(2016年承認案件)
援助先、援助分野に見られる変化は?
中国国務院弁公室は2011年4月初めて対外援助白皮書を発表、14年7月、2回目の白皮書を発表した(なお、3年毎に更新発表していく方針かと思われたが、17年9月時点で最新版の発表はない)。
14年版によると、2010〜12年の援助総額は893.4億元(白皮書では別途、国際援助機関との協力について記述した部分があり、この数値は2国間援助のみ)、うちアフリカ向けが最も多く、次いでアジア、両地域で全体の8割以上を占める。援助形態は無償援助、無利子融資、優遇融資に分けられている。分野は輸送、電力など基礎インフラが5割近く、病院、学校、上下水道など社会公共インフラと合わせ全体の7割以上を占め、その他、物資提供、人材育成、工業、農業などとなっている。これらを初回白皮書で示された09年までの実績と比較すると、次のような傾向が見て取れる(図表4)。
①地域別:対アフリカ援助がさらに拡大する一方(2009年45.7%→10〜12年51.8%)、アジア、ラ米の割合低下(各々、32.8%→30.5%、12.7%→8.4%)。
②援助分野:基礎インフラ(〜2009年61.0%→10〜12年44.8%)から社会公共インフラ(3.2%→27.6%)、人材育成(10〜12年5.8%)へシフト。
③援助形態:80年代〜90年代初多かった無利子融資が縮小し(29.9%→8.1%)、優遇融資、無償援助が主に(合わせて70.1%→91.9%)。
④被援助国:最貧国向けが大きく増加(39.7%→52.1%)。
[図表4]中国対外援助先地域別シェア
援助予算は財政部が統一的に管理、融資元本は中国輸出入銀行が市場を通じ調達、優遇金利は人民銀行の基準金利より低く、利子補給が財政負担となる。中国では以前から、援助、開発融資、投資の区分が不明瞭で、譲許性の高い融資のどこまでが援助として認識されているか判然としないが、白皮書の記述から、無償援助と利子補給分が援助予算として計上されていると思われる。
<主要参考文献>
1.「中国的对外援助白皮书」国务院新闻办公室、2014年7月、2011年4月
2.「新中国成立后对外援助30年」2014年7月11日付南方网
3.「中西不同方式引评说援外:中国有‘历史厚度’」2014年7月15日付环球时报