評価額の減額だけが相続税対策ではない
③現金化のしやすさが最重要「物件の流動性」が高いのは?
私が考えている相続の目的は、「親が持っている資産2億円の相続税評価額を下げ、時間をかけてでも子どもに2億円として残す」ことです。しかし、多くの人が相続税対策に失敗してしまう理由は、図表のように相続税評価額を下げるところまでしか考えていないからになります。
[図表]
本来、相続税対策の流れとしては、相続税評価額を下げ、その後、収益を確保しながら物件の売却を行い、相続税対策前の資産と同じもしくはそれ以上の金額を子どもに残すことです。
そのミッションをクリアするには、収益性の確保と同時に、物件の売却を成功させることが必要になります。これに失敗した場合、相続税対策前と同じ資産を子どもに残すことはできません。そのためには、子どもに残す物件の流動性の高さを確保する必要があります。
しかし、不動産は、資産運用のなかでも流動性の低いことがデメリットです。ただ、相続税対策に有利なのも、不動産であることは間違いありません。そのため、不動産のなかでも流動性の高い物件をセレクトすることは、相続税対策成功の大きなポイントと言えます。
不動産は相続前と同じ資産額に「復元」することが大切
流動性が高い不動産を選ぶポイントは、2つあります。それは、「①多くの人が買いやすく」「②多くの人が求めている物件」です。そのポイントについて、説明していきます。
最初のポイントである多くの人が買いやすいということに対して、説明していきたいと思います。相続税対策は、最終的に物件の売却や収益を確保することで、相続前と同じ資産額に復元していくことが大切です。
物件を売却するということは、次に購入する人がいて初めて売却することが可能です。そのため、流通量が多い種類の物件を選択することが、売却しやすい物件選びの第一のステップになります。その点でいえば、平成28年の新築ワンルームマンションの供給が1万1168戸なのに対し、平成28年の取引事例が年間8万戸超と新築市場に比べ約8倍の流通量を確保できている首都圏の中古ワンルームマンション市場は、売却しやすい不動産取引市場の1つと言えるでしょう。
首都圏の中古1Rマンション市場が活発な理由とは?
取引量の多い市場というのは、流動性が高く現金化しやすいという特性があります。現在、首都圏の中古ワンルームマンション市場が盛り上がっている理由は、大きく2つです。
1つは、今回の書籍のテーマである相続税対策が活発になっていること、もう1つは、国民的社会問題になりつつある老後破産を回避するために、多くのサラリーマンが中古のワンルームマンションから入る家賃収入で老後の対策をしているからになります。
平成10年代初頭ではワンルームマンション経営といえば、大企業の課長職以上が行う資産運用として捉えられていましたが、近年では金融機関の融資条件が大幅に緩和され、普通のサラリーマンであればほとんどの人がローンを組んでワンルームマンション経営をすることが可能になりました。
今の時代、何も対策をしなければ老後破産に陥る確率は大幅にアップするため、現役時代からワンルームマンションによる資産運用を行い老後破産に対応できる家賃収入を確保しようという動きが広がっています。2000万円程度のワンルームマンションであればサラリーマンでも返済可能な金額なので、金融機関も融資を出しやすく融資事例も増え取引市場は活発化しているのが現状です。