前回に引き続き、海外での災害事態に備える「オールリスク担保」保険について説明します。※本連載は、オリック東京法律事務所の外国法共同事業訴訟部、代表パートナーの髙取芳宏氏と、同じくオリック東京法律事務所の外国法共同事業訴訟部パートナーの矢倉信介氏の編著、『最新 クロスボーダー紛争実務戦略』(レクシスネクシス・ジャパン)より一部を抜粋し、災害時における保険金請求の実務について説明します。

ほかの保険で網羅されていない、追加的な補償も

3. その他の一般的な「オールリスク担保」保険

 

「オールリスク担保」保険には、伝統的な第一当事者保険や事業中断保険で網羅されていない部分に対応するための追加的な補償が含まれていることが多い。これには、保険契約者の業務に特有の特別なリスクが反映されている場合がある。

 

広範に使われている条項の1つに「Civil authorityに対する補償」がある。既に述べたように、今までの事業中断保険は、補償の範囲内の財産の損失によって生じた機会損失、すなわち被保険者自身の財産の損失を補償している。

 

その結果、公共の安全性を理由として政府当局が命令を発する場合など、その他の理由で被保険者の事業を閉鎖しなければならない場合には、補償の対象とならない間隙が残る結果となる。

 

「Civil authorityに対する補償」では、自社は直接的な財産の損失を被らないものの、公共の安全性を理由として、他の財産の損害が生じた場合に、政府当局が特定の距離内のすべての事業の閉鎖を命じることによって被った事業の損失が補償される。

 

重要な点は、ほとんどの保険で、Civil authorityによる閉鎖の結果生じた損失は、中断された事業と一定の関係(保険証書に定める)になければならない、とされていることである。

伝統的な事業中断保険の間隙を埋めることが可能に

また、多くの保険では入口/出口補償の双方を提供している。これによって、従業員が仕事場へ行こうとする場合に危険が生じる、あるいは主要な供給品・コンポーネントの配達を妨げるような、近隣のビルの崩壊や連絡道路の遮断などによって自社の事業が妨げられる場合の補償を提供し、伝統的な事業中断保険の間隙を埋めることができる。

 

オールリスク担保保険の補償は被保険者自身の財産以外の財産の損害に起因して行われるものの、入口/出口補償は、補償対象の財産が保険契約者自身の財産であった場合に補償される種類と同じ財産の損害を補償する。

 

それほど一般的ではないものの、サービス提供者が財産損害を受けたために、重要なサービス(典型例は公共サービス)が中断された場合に提供される補償として、サービス中断補償がある。かかる補償は、電気、ガス、燃料、蒸気、水又は冷却施設の損失、又は外部につながる下水道の欠如によって生じた事業の中断及び「追加費用」も対象に含む場合がある。

 

一般的に、補償が適用されるためには、原因は偶発的でなければならず、サービス中断と事業中断の間の因果関係は直接的でなければならない。また、供給業者のサービスの中断は、定められた「保険適用地域」内で生じたものでなければならない。

最新 クロスボーダー紛争実務戦略

最新 クロスボーダー紛争実務戦略

髙取 芳宏,矢倉 信介

レクシスネクシス・ジャパン

日本企業が戦略的にクロスボーダー紛争の予防・解決を図るための具体的な実務対応をアドバイス 近時のビジネスは、クロスボーダー化していることはもちろん、紛争事案も複数の管轄が絡む複雑なものとなっているため、これに…

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