今回は、電力会社の切り替えにあたり、関連設備を設置する必要はあるか、また契約した電力会社が倒産するとどうなるのかを説明します。※本連載は、一般社団法人エネルギー情報センターの理事で、エネルギーとビジネスに関する執筆・講演活動なども行う江田健二氏の著書、『エネルギー自由化は「金のなる木」70の金言+α』(エネルギーフォーラム)より一部を抜粋し、電力小売り全面自由化を活用し、黒字経営を実現する方法をQ&A方式で説明します。

電線や関連設備の設置は不要

Q:電線や関連設備などを改めて設置してもらう必要があるの?

 

A:電力会社の切り替えにあたり、電線や関連設備の設置は必要ありません(つまり、先行投資が要りません)。

 

なかなか理解しにくいと思いますが、電気料金を見直し、これまでの電力会社から新しい電力会社に変更した場合、設備などを改めて購入する必要はありません。「電線は変える必要があるの?」と思われるかもしれませんが、ビルや店舗までの電線などのインフラ設備は、電力会社同士が共同で利用しているからです。

 

電力会社は、共同で電線を利用し、利用した分だけ費用を負担し合います。また、電線網の敷設費用や維持管理費用についても、電力会社が共同で負担することとなっています。

 

理解を深めていただくために、例えば、多くの運送会社のトラックが共同で利用する高速道路をイメージしていただくとわかりやすいでしょう。各社が、わざわざ専用の高速道路を造るのではなく、皆でひとつの高速道路を利用し、利用したトラックごとに適切な料金を支払っています。

 

日本は、大半のエリアで既に電線が引かれていますので、電力会社を切り替えたからといって、新しく電線を整備することは稀です。既存の電線網を活用するケースがほとんどです。

 

また、前述しましたが、電力会社の切り替えに伴い、それまで電気使用量を計測していたアナログメーターをスマートメーターに切り替える必要がある場合も、その費用はかかりません。

電力会社が倒産しても、電気が止められることはない

Q:新たに契約した電力会社が倒産したら、電気は止まってしまうの?

 

A:次の会社との契約手続きは必要ですが、電気が止まることはありません。

 

「安くなるのはいいけど、電気という重要なライフラインを新しくできた電力会社に任せるのは、なんとなく不安だ」と感じるのは尤もです。しかし、電気がライフラインであるからこそ、しっかり消費者保護のための法整備が整っています。契約していた電力会社が、ある日突然、倒産したとしても、皆さんの電気が止められることはありません。

 

電力小売り全面自由化のなかで、発電量の不足など停電リスクが高まった場合や契約中の電力会社が倒産した場合も、地域間や電力会社同士で電気を融通し合う体制が整えられています。ただし、できるだけ早く新しい電力会社を探し、契約し直す必要はあります。

エネルギー自由化は「金のなる木」70の金言+α

エネルギー自由化は「金のなる木」70の金言+α

江田 健二

エネルギーフォーラム

2016年4月から「電力小売り全面自由化」が始まり、にわかにクローズアップされた「電気料金」。 本書では、エネルギーのコスト削減方法、そして新規事業としてエネルギーの取り扱いを始めることについての素朴な疑問に答えて…

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