写真:GTACスタッフ

国際収支問題に端を発し、自動車の輸入制限がかけられるようにったスリランカでは、輸入中古車の値段も上がり始めて、庶民からの批判も増しています。このような結果を招いたスリランカの財政・金融政策の問題を概観し、中央銀行改革の必要性を訴えた現地経済誌の記事を、3回にわたってご紹介します。

政治家・官僚たちに翻弄される一般市民

自らは車を所有しているスリランカの官僚・政治家・中央銀行員らが、車の輸入に対する規制を強化し始め、これまでも紙幣乱発の度に行われてきた卑劣な貿易統制体制に回帰してしまった。このことによって、自由貿易を完全に実現すると保証するためには、スリランカ中央銀行の早急な改革が必要であるということが、一層明らかになった。

 

求められている自由貿易への歩みが後退したわけではなく、経済的ナショナリズムや排外主義に基づく輸入反対の声が再び台頭しているわけではないことを示すためにも、ソフト・ペッグ制(※)をとっている中央銀行の刷新が重要であることを、この一連の事態は示しているのだ。

 

一般の国民にこのような規制を課す人々は、ほぼ間違いなく税を軽減されて、あるいは免税されて車を購入しているだろう。農奴制さながらの不公平さがはびこるスリランカでは民間人は全員二流と見なされ、政治家・官僚などが経済的恩恵を奪っているのではないだろうか。

失政の代償という側面もある「車の輸入規制」

政治家が欠陥のある中央銀行を悪用して紙幣を乱発することで、車が身代わりに供されている。過去にも税金を上げたり、信用状取引を厳格化することなどで、車の輸入は規制されてきた。今回は自動車に対する担保掛目(LTV比)の制限引き上げを中央銀行は行った。また同時にスリランカ・ルピーを変動相場制に移行させる試みもあった。

 

担保掛目における制限を引き上げることは必ずしも悪いことではない。というのも堅実路線の観点で言えば、過大な融資を制限することで、経済低迷時に貸し手を保護し得るからだ。とはいえ、この政策は紙幣の増刷や突然増えた国家公務員の給料・その他交付金などの根本的な問題に対する解決にはならない。また結局のところ、自動車の輸入は巨額な税収入をもたらし、スリランカが抱える多額の借金を解消する一助になるはずのものなのだ。

 

次回は市場介入を繰り返す当局の為替政策の問題についてお伝えします。


※ソフト・ペッグ制…固定相場制の一つで、特定の通貨と自国の通貨の為替レートを一定の範囲内に保つ制度を指す。
 

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    この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Trade Regime in Danger Of Import Controls as Money Printing Fuels BOP Crisis」を、翻訳・編集したものです。

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