国際収支問題に端を発し、自動車の輸入制限がかけられるようにったスリランカでは、輸入中古車の値段も上がり始めて、庶民からの批判も増しています。このような結果を招いたスリランカの財政・金融政策の問題を概観し、中央銀行改革の必要性を訴えた現地経済誌の記事を、3回にわたってご紹介する連載の2回目です。

「紙幣増刷」と「為替介入」という相反する政策

国際収支の悪化からスリランカ当局は車の輸入に規制をかけ始めたのだが、国内のクレジットが自動車から別のセクターに向かえば、結局のところ国際収支上の損失は変わらないし、それは1ドルあたりの取引に対する税収入を減らすことにもなる。

 

ここで問題となってくるのは、中央銀行によって裏打ちされた融資だ。どんな融資であれ、それが預金に裏打ちされた貸付である限り、その国の経済は安定を保てる。ここでは、その融資が不良債権になるかどうかは完全に別問題だ。お金は代替可能な性質を持つため、どの融資が中央銀行の信用に裏打ちされたものかは明言できない。また過去には、支配階級や官僚によって、電化製品などが「贅沢品」だと見なされ増税されたこともある。

 

国際収支問題は金利に対する国の介入に加えて、中央銀行による国債購入を介して銀行システムに投入されたルピー準備金によって引き起こさた。そしてこのことが国家公務員の給与高騰をも招いた。もし車に課税する理由が一つでもあるとしたら、それは税収入を増やすこと以外は考えられないだろう。

 

この問題は、国の介入を増やすのではなく減らすことで解決するだろう。なぜなら、国際収支の危機自体は、相反する金融政策と為替政策によるものだからだ。スリランカは、紙幣を増刷しながら外国為替市場に介入しようとしている。

事実上、失敗している変動相場制への移行

2015年9月4日、スリランカはその相反する政策の片方を廃止し、変動相場制に移行した。これで不胎化外貨売り介入(※1)を終わらせたはずだ。しかし初期データによればこの矛盾する政策は継続していて、この変動相場制は事実上、失敗に終わっている。9月後半までに、2億5000万米ドルを超える額が干渉主義者の手元に落ちた可能性もあるのだ。

 

この原因の一部には債券市場からの資本逃避が挙げられ、必ずしも紙幣乱発をきっかけとした輸入増加によるわけではない。しかし、この資本逃避が中央銀行のクレジット拡大ではなく国内クレジットの収縮によるものだとすれば、これほど外貨準備高が損なわれることはなかっただろう。

 

スリランカの段階的な貿易規制が始まったのは、紙幣を乱発するこの中央銀行が1951年に設立された後のことで、当時のジャヤワルダナ財務大臣が政治的な理由でカレンシー・ボード制(※2)を廃止したことから始まった。

 

100年以上も続く英連邦のスターリング地域(※3)をもターゲットにして、ドル・ペッグ制を採用したブレトン・ウッズ体制(結局は20年ほどで崩壊する)を確立させたアメリカによる外交的な攻撃の被害者にも、ジャヤワルダナ財務大臣はなった。

 

次回は、ブレトン・ウッズ体制崩壊後の世界情勢、そして、その中でのスリランカの動きを見ていきます。

 

※1不胎化外貨売り介入
外貨売り介入では、市中から自国通貨が中央銀行に吸い上げられることになるため、その影響を緩和することを「不胎化」と言う。
※2カーレンシー・ボード制
自国通貨を米ドルなどの外貨を基準として固定化し、かつ中央銀行が流通する自国通貨に見合うだけの基準外貨を保有することで、それとの交換性を担保する制度のこと。
※3スターリング地域
ポンド地域とも言い、主に英連邦に属していてポンドを中心通貨としている地域のこと。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「Trade Regime in Danger Of Import Controls as Money Printing Fuels BOP Crisis」を、翻訳・編集したものです。

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