今回は、企業における「価値創造のプロセス」の原点を見ていきます。※本連載では、株式会社バリュークリエイト代表取締役・三冨正博氏の著書『「見えない資産」経営 企業価値と利益の源泉』(東方通信社)から一部を抜粋し、組織資産や人的資産、顧客資産といった「見えない」資産の創り方を見ていきます。

組織資産のもっとも深い底にある「情熱」が企業の本質

ところで、物的資産と金融資産、人的資産と顧客資産の2組の資産が表裏となって、組織活動が形づくられていくときに、組織資産はいったい何の役割をはたしているのだろうか。

 

まず、組織資産は4つの資産がぐるぐると回るための求心力としての役割を担っている。求心力が働くためには求心力を生み出す源泉が必要である。同時に、ぐるぐる回るための軸が必要となる。軸がぶれるとうまく回らないので、4つの資産を束ねるために、一貫性のある中心がどっしり座っていなければならない。そして、中心軸となる組織資産のもっとも深い底にある「情熱」が企業の本質であり、これがすべてのエネルギーの源泉となる。

 

軸の中心の底にある情熱、すべてのエネルギーを生み出す源泉のことを、私たちは「ワクワク」と名付けた。

なぜその企業は起こり、そして栄えたのか?

新しく創業した企業の95%が10年以内に消滅するといわれている。この数値は基本的に世界共通のようだ。たとえ数年でも、経営が成り立つということは得難いことであり、その企業には数多くの消えていった億万の企業にはない特別に支持される理由がある。では、いったい何が受け入れられて企業は存続しているのか。

 

すべての答えは原点にある。いったいなぜその企業は起こり、そして、栄えたのかを知ることはきわめて重要である。

 

私も創業者だからわかる。創業の動機は、情熱(ワクワク)しかない。何があっても、これを成し遂げたい、どうしても伝えたいという心の衝動。それが、物事を動かす最初にあり、原点である。

 

理屈はない。なぜやらなければならないのか、という理由らしい理由はそもそもない。ただ、どうしても成し遂げたいという熱い想いだけがある。それが、創業者個人の想いにとどまらなかったのは、結果としてその想いに共感する人がいて人材が集まり、その情熱を受け入れたいという人がいて顧客となりマーケットに受け入れられたからに他ならない。

 

企業活動を愚直に行い毎日コツコツ楽しく続けていくと少しずつ循環に勢いがついていき、輪が広がっていく。そして、長期的に継続するほど、想いが醸成され、色濃くなり、引き付けられる人(人的資産)がさらに集まり、受け入れたいという人(顧客資産)がさらに増えて、マーケットで一定の地位を獲得するようになり、それが毎年毎年まるで年輪のように積み重なり、歴史となっていく。

 

このように考えると、価値創造のプロセスとは、企業の根底にある情熱(ワクワク)が原点となり、創業から現在までに築き上げた企業活動のすべてが組織資産となって行動原理や魅力、個性を磨き上げ、大きな求心力を生み出し、その原理に人が引き付けられること(イキイキやニコニコ)によって、回転していくものであることがわかる。

本連載は、2017年5月13日刊行の書籍『「見えない資産」経営 企業価値と利益の源泉』(東方通信社)から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉

「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉

三富 正博

東方通信社

企業価値というと、金融資産や物的資産といった「見える資産」ばかりが注目されがちだが、著者はそのほかにも組織資産や人的資産、顧客資産といった「見えない資産」があることを強調し、それこそが企業価値と利益の源泉である…

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