中国企業減税の要とされ、営業税を増値税に移行させる改革「営改増」。今回は、企業減税、構造改革等における「営改増」の成果について見ていきます。

零細企業が多い「生活サービス」は減税効果が大

国税総局最新推計によると、12年1月〜17年2月の減税額は累計1.2兆元以上にぼる。営改増移行が完了した16年5月1日〜17年4月末の減税規模は6993億元(16年税収総額13兆354億元の5.4%に相当する規模)で、そのうち16年新たに営改増の対象となった4業種の減税規模は2419億元、98.7%の企業が減税の恩恵を受けた。

 

中国の普華永道会計事務所が調査したところによると(4月29日付第一財経報道)、建設は営業税率3%から増値税11%になり、また建築材料購入にかかるインボイス取得が困難な場合が多いこともあって減税効果は最も小さい一方(16年5〜11月、65億元、3.75%減)、零細企業が多い生活サービスは営業税率5%が中小零細優遇の3%増値税率となり、最も減税効果が大きかった(同、562億元、29.85%)。これら零細企業では、税率だけでなく、課税ベースが小さくなることもあって、概ね税負担が40%軽減になっているとの推計もある(西南財経大学)。

利潤が2倍強、総資産も3倍に増加した春秋航空

営改増の最初の試験地となった上海について、その効果を見てみると次の通りだ(3月30日付解放日報)。

 

上海市国税局の推計では営改増が施行されて以降5年間の減税規模は累計2000億元弱で、これは上海所在の100大企業の16年納税総額に相当する規模だ。16年、対象企業の74%が増値税への移行を完了した。年毎に見ると、12年136億元、13年251億元、14年354億元、15年387億元、16年840億元と、対象範囲の拡大に伴い、減税額も年を追って増加した。

 

春秋航空では税負担が3%減少、航空機1機購入あたり200万元税負担が軽減し、同社の保有機体は12年の30機から現在68機に増加し、また利潤は2倍強、総資産は約3倍に増加した。

 

スマホ技術などで有名な通信機器メーカー華為(フアーウェー)上海拠点では、研究開発とその販売・営業を行う100%子会社を研究開発に特化させ、販売・営業機能を本社に移すことが長年の課題だったが、税負担が重くなることから実現していなかった。しかし営改増実施で13年、ようやくこれが実現した。こうした改革で、企業本体、研究開発部門の発展が加速し、結果的に企業の納税額が増加し、政府も潤うという相乗効果が出ているという。

 

また、上海の第3次産業比率は11年58%から16年70.5%へと上昇した。営改増のみがその理由というわけではないだろうが、営改増による次のような効果が大きいという。

 

①サービス業と製造業が同等の税制となり、サービス業の税負担が軽減したこと。

②サービス業がサービスを提供した川下の製造業に対しインボイスを発行、製造業はそれを仕入れ税額控除に使用し税負担軽減、結果的にサービス業と製造業が共に発展する相乗効果が生じた。

③仕入れ税額控除導入で、製造企業が研究開発等、生産以外の様々な業務をアウトソースすることが容易になり、これがサービス業の発展につながった。

 

歴史的に民間企業の発達が著しい浙江省では、3%の優遇増値税率の恩恵を受ける中小零細企業の増加が著しく、16年5月に新たに対象となった4業種についてだけ見ても、17年4月までに累計153万の新たな企業が発生、毎月12.75万企業が増加している計算になるという(浙江省統計として6月15日付人民日報報道)。

 

 

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