借入金は「負債」であり「費用」ではない
前回に引き続き、決算書の仕訳のルールを見ていきましょう。
❼事務所を借りていますので、家賃60万円を支払いました
家賃は費用の増加なので左側に、現金の減少は右側に書き入れます。
❽資金に余裕がなくなってきたので、銀行から200万円を借入れました
現金が増加したので左側に書き入れ、借入金という負債が増加したので右側に書き入れます。
❾借入金の一部を返済しました 元金100万円、利息10万円
まず、返済で現金が減少しましたので、右側に現金110万円を書き入れます。その減少した原因は元金返済100万円と利息10万円ですので、左側に負債の減少として借入金100万円を、同じく左側に費用の増加として支払利息10万円を書き入れます。
「借入金の返済は費用にならないの?」と聞かれることがありますが、「借入金は負債ですので費用ではありませんし、実際、借入をしたときも収益として計上していませんよね」とお答えしています。
把握しておきたい「費用収益対応の原則」
決算❶決算をむかえ、車の減価償却を行います 耐用年数5年
耐用年数とは、その資産を使用できる可能年数のことをいいます。本来なら会社が独自に見積もって定めるべきですが、中小企業の多くは国が定めている法定耐用年数を使用しています。
耐用年数が5年ということは、この車は5年間使用できて、5年の間、収益に貢献すると考えます。収益に対応させるために、使用期間にわたって費用に計上していくわけです。これを簿記では「費用収益対応の原則」といいます。また、資産を耐用年数に応じて費用に変えていくことを減価償却といいます。減価償却費は費用の増加なので左側に、車両は資産価値が減少したので右側に書き入れます。
決算❷仕入れた商品300個(1個2万円)のうち、200個は売れ残ったので、在庫の計上をします
ようやく、最後の仕訳です。もうだいぶ慣れてきましたよね。期末に売れ残った商品が200個ありますので、単価2万円を乗じて計算した商品400万円を、資産の増加として左側に書き入れます。
仕入れたときは、仕入れた商品300個を、すべて仕入として費用計上していました。でも実際に売れたのは商品100個なので、費用と収益が対応しなくなってしまいます。簿記では、仕入れた商品の費用を知りたいのではなく、売れた商品の費用を知りたいわけです。ここでも「費用収益対応の原則」から、商品100個の収益に対応する、商品100個の費用を期末で求めていく必要があります。
商品300個は期中で費用の増加として計上されているので、期末に売れ残った商品200個を期末棚卸高という勘定科目で費用の減少として計上することにより、差引きで商品100個の費用を計算していきます。収益に対応する商品100個の費用のことを「売上原価」といいます。期末棚卸高は費用の減少なので右側に書き入れます。
こうやって、昔から商人は、毎日毎日、取引を帳簿に書き入れてきました。当然、業績がよくなると、取引の量が増加し、帳簿記入が忙しくなります。だから、商売繁盛して儲けが多い時を、「書き入れ時」というようになったそうです。
[図表]仕訳の実践