従業員や家族、時には友人の生計まで担う経営者
経営者の中には事業を続けることで自分や家族、従業員だけでなく兄弟や友人の生計まで担っている人がいます。兄弟や友人と共同で事業を営んでいたり、従業員として働いてもらっていたりするのです。
廃業するとそんな人たちが経済的に行き詰まり、生活できなくなります。単なる従業員であれば、経営者の決断として廃業を納得させることができますが、血を分けた兄弟やそれまで個人的に関係を築いてきた友人の場合は事情が異なります。
人によっては他の企業で働いたことがなく再就職が難しかったり、健康上の問題に配慮してもらえる環境でなければ働くことが難しかったりというケースもあるでしょう。雇用している立場とはいえ、一方的に廃業を押しつけるのは心情的に簡単なことではありません。
家族や親類の反対を抑えるには「独断専行」が有効!?
中でももっとも強硬かつ説得の難しい反対勢力が家族です。理由は主に二つあります。
一つは不動産を売る必然性が家族に理解されていないことです。経営者の大半は家で仕事の話をあまりしません。家族は赤字が続いていることや将来的な展望が暗いこと、負債が膨らむばかりで脱却するには土地や建物を売るしかないことなどの事情を知らないため、「どうにかなるのでは?」と考えがちです。どうにかできるのであれば、頑張って生計を維持してほしいという希望が強いため、不動産の売却に反対するのです。
もう一つの理由はやはり収入がなくなることに対する不安です。経営者は赤字状態にあってもある程度の収入を得られている人が少なくありません。しかし、廃業すれば収入はゼロになるため、高収入に慣れた家族も生活レベルを大きく引き下げねばなりません。それどころか「生活そのものが成り立たないのでは」という不安が大きいことから、家族は反対せずにいられないのです。
これを解決するために大切なのは、契約が決まるまで家族にはなにも教えないことです。廃業も不動産の売却も教える必要はありません。家族に教えるのは売買契約を締結した後にすべきです。その前に廃業後の仕事先を決めておき、併せて伝えると家族も安心できるはずです。