前回に引き続き、「隣地境界」の問題を解決した事例を見ていきます。今回は、隣地境界問題を解決に導く「額縁分筆」についても併せて説明します。

境界のはっきりしない隣地に接する土地を「切り出す」

前回の続きです。

 

そこでこの例では、「額縁分筆」と呼ばれるやり方を採用しました。考え方としては、「損して得取れ」の発想です。

 

簡単にいえば、境界のはっきりしない隣地に接する土地をごく一部だけ切り出して分筆します。自社で所有する土地の中に境界を新しく設定することで、土地所有権の範囲を確定させるのです。

 

こうすれば、事業用地として想定する土地は隣地との境界が全てはっきりし、したがって広さも確定できます。

 

しかし、隣地との間で切り出して分筆した土地は切り捨てることになります。持ち続けるほかありませんが、利用できませんし、当然売却処分もできません。そこにだけ着目すれば損かもしれませんが、全体として考えれば、事業用地の方を生かすことができるので、得です。これが、「損して得取れ」の意味です。

額縁分筆を認めてもらうための「根拠」を準備しておく

ただし、この額縁分筆はそうそう認められるものではないので、安易に利用できるやり方とはいえません。認められるのに必要な根拠を、こちらでしっかり準備したからこそ、この例では実現できたと考えています。

 

一つは、測量の実施です。土地の周囲には境界ポイントとして明らかなものがあります。それらを手掛かりに測量を重ね、この土地の所有権の範囲を推定することを試みています。

 

もう一つは、隣地所有者の同意拒否という事実を主張することです。隣地所有者は自分で正しいと考える隣地境界はここであると反論することもなく、こちらから持ち掛けた隣地境界にただ同意しないという対応でした。いわば反論のない同意拒否です。

 

この点は登記官に主張し、額縁分筆の登記を認めるか否かの判断にあたって勘案してもらう必要があります。

 

とりわけ重要なのは、隣地との間で切り捨てることになる土地の広さをどこまで抑えられるかという点です。地価の高い場所ですから、その大小が不動産事業の収益性に大きく響きます。そこは、登記官の判断次第なのです。

 

この例ではこうした努力が実って額縁分筆が認められたばかりか、隣地との間で切り捨てることになる土地の広さをごくわずかにとどめることができました。それによって、土地所有権の範囲の確定されたもう一方の土地を、投資用マンションの開発用地として無事に売却することができるようになったわけです。

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    本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    宮﨑 泰彦

    幻冬舎メディアコンサルティング

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