前回は、立ち退き問題を防ぐには「定期借家」が有効である理由を説明しました。今回は、「隣地境界」の問題を解決した事例を見ていきます。

隣地所有者の協力が得られるなら、何の問題もないが…

借地や借家は所有する不動産に第三者の権利があるがために、所有者がその不動産を好きなように売却処分できない一例です。

 

第三者の権利として同じように注意したいのは、隣地の所有権です。どこからどこまでは自分の土地で、どこから先は他人の土地なのか、その境界がはっきりしていれば問題はありませんが、そこがあいまいだと本来は好きなように売却できるはずの不動産でもそのままでは買い手が付きません。

 

境界があいまいということは土地の面積もあいまいということ。面積のあいまいな土地を買おうという人はいません。いわゆる隣地境界の問題です。

 

このような場合、当然、隣地境界を確定させるべきです。ただそれには、隣地の所有者の同意が不可欠です。ここまでは自分の土地であるということを、互いに納得の上で確認し合う必要があるからです。したがって、仮に隣地境界がはっきりしていなくても、隣地所有者の協力が得られる場合であれば、事実上は何の問題も生じません。

間口が狭いため、隣地を買い増すことに

困るのは、隣地所有者の協力を得られない場合です。何かの事情で隣地境界を認めようとしない、そういう場合もあり得ます。どうすればよいのでしょうか。

 

東京都港区内で取得し、投資用マンションを開発する不動産会社に売却した土地は、まさにそうした例の一つです。隣地境界があいまいだったのです。しかし、マンション開発用地として売却できたということは、その問題が解決できたということです。

 

この例ではどのような手段を取ったのでしょうか。具体例に基づいて説明します。

 

間口に比べて奥行きの深い土地を手に入れたのが、この案件に関与するようになったきっかけです。まず土地所有者に対する債権を買い取り、債権者としてそこが所有している土地に競売を申し立て、債権者自ら競落する自己競落を狙っていました。

 

競売では第三者に落札されてしまったので、土地はその落札者から買い取ることになりましたが、最終的には狙い通り、土地を手に入れることができました。ただ、この土地だけでは間口が狭い。せいぜい6m程度しかありません。

 

そこで隣地を買い増すことにしました。隣地も間口が狭いものの、逆L字形の土地なので奥に入ると少し広がりを持っています。これら2つの土地を一体で考えれば、土地の広さも間口も確保できるので、そこに分譲マンションを開発することが可能です。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

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宮﨑 泰彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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