前回に引き続き、「隣地境界」の問題を解決した事例を見ていきます。今回は、隣地境界問題で悩ましい「囲繞地との境界」とは何かを説明します。

道路に面していない土地「囲繞地」

前回の続きです。

 

ここで問題になったのは、逆L字形の土地が奥の方で広がった部分と隣接する囲繞地(いにょうち)との境界がはっきりしていないという点です。

 

囲繞地というのは、第三者の土地に周囲を囲まれていて、道路に面していない土地のこと。そこに立つ建物を将来建て替えるときには建て替えられない恐れがある土地です。この囲繞地との間には境界を示す境界ポイントが一切見当たらないのです。

 

しかし、この境界をはっきりさせることができないと、せっかく手に入れた2つの土地を生かすことができません。

 

境界の確定に向けて隣地所有者の同意を得ようと、半年くらいの間、何度も訪ねましたが、一向にらちが明きません。どうやら、いま想定される隣地境界を認めてしまうと将来の建て替えに不都合を来すのではないか、と考えているようです。

 

そういう事情ですから、ここがむしろ自分が考える正しい隣地境界であるという明確な反論を主張するわけでもありません。こちらから持ち掛けている隣地境界には同意しない、しかし明確に反論するわけでもない。そうした状況が続きました。

 

このように隣地境界が定まらない場合を念頭に置いて、国は筆界特定という制度を用意しています。「筆界」とは土地登記の最小単位である「筆」の境界です。

 

土地所有者の申し立てを受けて、不動産登記業務を所管する法務局の登記官が一定の手続きの下でこれを定めてくれる、という制度です。この制度を活用すれば、隣地所有者の同意なしに、筆界を定めることができます。

 

ただ、この手続きに基づき筆界を定めるには、一定の費用と時間が掛かります。申請手数料だけであればそう大きな金額ではありませんが、手続きのなかで測量が必要になると、その費用が加わります。100万円単位の金額が必要になることもあります。

確定できるのはあくまで「筆界」のみ・・・境界は含まれず

ところが、それだけの費用と時間を投じても、確定できるのはあくまで、筆界ということに注意が必要です。境界ではないのです。

 

筆界と境界は「登記された土地の範囲を示す」という点では共通ですが、「所有権の範囲を示す」か否かという点で言えば、それはあくまで境界であって、筆界ではありません。筆界は決して所有権の範囲を示すものではないのです。したがって、筆界を確定させても、所有地の広さは必ずしも定まりません。

 

それはそれで、また別の手続きを経る必要があります。つまり、この土地で開発事業を予定している場合、事業用地の広さが後日増減することになる可能性があるわけです。

 

開発事業は綿密な事業計画に従って事業性をチェックしながら進めていくので、事業用地の面積に増減の可能性があるということは事業リスクの要因を一つ増やすことにつながります。それは、開発事業を進める立場からすれば避けなければなりません。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

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宮﨑 泰彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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