前回は、開発プロジェクトで地価が高騰する京都駅エリアの現況について取り上げました。今回は、京都市の「インバウンド特需」について見ていきます。

「想定価格の倍」で入札するホテル業者も

日本への外国人観光客が急増したことで、京都市はインバウンド特需で非常に活況を呈しています。インバウンド旋風は観光業界だけではなく、不動産業界全体にも大きな影響を及ぼしており、京都市の地価が急騰している大きな要因になっています。

 

最近では、入札でもホテル業者が想定価格の倍ぐらいの値段で入れてくるので、私たちレジデンス業者では太刀打ちができません。実際、当社が2億円で入札した京都駅前の土地を、結局ホテル業者が4億円で落札したケースがありました。

 

余談ですが、某大手不動産会社がレジデンス用地として大きな土地を仕入れて着工もしていたのに、急に工事がストップした事例もあります。聞いたところ、その大手不動産会社はファミリーマンションを分譲する計画だったのですが、ホテル業者に高額での買い取りを打診され、売却を決めたのです。着工済みだったこともあり、恐らくこの不動産会社から建設会社への違約金が発生するでしょうが、その違約金を払ってもまだ利益が残るような価格での売却だったということでしょう。

民泊に代わり「簡易宿泊所」の需要も増加

観光特需によって気になる話題としては、一般の住宅やマンションを旅行者に貸し出す、Airbnb(エアビーアンドビー)に代表される「民泊」の問題です。

 

京都市は観光都市として観光客を呼びたいと考えていますが、民泊に対してはかなり慎重です。京都は伝統的に観光業界やホテル業界が強く、民泊はホテルと真っ向から対立するため歓迎されないのかもしれません。

 

それでもこれまでにマンションの一室を勝手に民泊に転用し、トラブルになるケースが増えていましたが、今では多くのマンションが管理規約で民泊を禁止しています。もちろん、私の会社で管理しているマンションでも禁止です。

 

そこで民泊に代わって出てきたのが、旅館業の届け出をして運営する簡易宿泊所です。これもマンションの一室では許可がおりませんので、町家などを一棟丸ごと改装し、消防法などに適合する設備にして認可を得ているようです。外国人観光客向けにいかにも「ザ・日本」という内外装にした高級タイプから、安さを売りにしたドミトリータイプまで、さまざまな簡易宿泊所があります。

平安京エリアの外に高級ホテルの建設ラッシュ

一方で富裕層向けの高級リゾートホテルの進出も進んでいます。京都は老舗旅館が多い上、景観条例で建築物の高さやデザインが規制されており、土地取得も困難なことなどから、外資系ホテルの進出は遅れていました。しかし外国人観光客の増加により、ここにきて開業ラッシュが続いています。

 

2014年2月には「ザ・リッツ・カールトン京都」が鴨川沿いの中京区に、2015年3月には米国を拠点とするスターウッドホテル&リゾートの「翠嵐(すいらん)ラグジュアリーコレクションホテル京都」が京都・嵐山の保津川沿いにオープン。スターウッドは日本でも「セントレジス」「ウェスティン」「シェラトン」などのブランドを展開していますが、「ラグジュアリーコレクション」はなかでも最高級クラスに位置付けられており、京都が日本で最初のオープンとなりました。2016年10月には、京都市の東山区で「フォーシーズンズホテル京都」が開業しました。

 

このように建設・開業がラッシュを迎えるホテルを概観すると、先ほどの平安京を基準としたエリアから外のエリアとなっていることがわかります。これだけ京都全体の不動産開発が進んでいくと、数年後は平安京エリアから外部に位置するエリアも収益不動産の投資対象として魅力的になっていくことが予想されます。

誰も知らない京都不動産投資の魅力

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八尾 浩之

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、不動産投資人気が過熱しており、将来の年金不安や資産運用など財テクの必要性から不動産投資を始める人が増えてきています。しかし、ブームが起こると競争が激化し、都市部では価格の高騰や建築コストの増加でマンション…

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