今回は、土地の「縄伸び」について見ていきます。※本連載は、税理士法人オフィスオハナの代表税理士・吉野広之進の著書、『土地評価に係る現地調査の重要ポイント』(税務研究会出版局)の中から一部を抜粋し、土地の現地調査の重要ポイントをやさしく紹介していきます。

現地で計測したら登記簿の面積と約30%の乖離が・・・

土地の現地確認から帰ってきた西田君は、なんだか浮かない顔をしている。

 

祐子:西田さん、お帰りなさい。今日のお宅はどうでした?

 

西田:聞いてよ、裕子ちゃん。被相続人のお宅に話を聞きに行ったついでに、自宅の隣の土地の現地確認もしてきたんだ。登記簿では330㎡ってなってて、きれいな長方形だったんだけどね。

 

祐子:330㎡っていうと、昔の100坪ってことですね。

 

西田:メジャーを持っていたんで、簡単に測ってみたら、間口は12mくらいで奥行が33mくらいありそうなんだよ。

 

祐子:12m×33m=396㎡・・・。約400㎡ですか~。登記簿の面積と30%くらいの誤差があるってとこですね。

 

西田:そうなんだよ。どっちが正しいのかわからなくなっちゃってさ。

公図の大半は、明治時代に作成された図面!?

<外出先から帰ってきた高橋所長が二人の話しに加わった>

 

所長:それは、「縄伸び」だな。

 

西田:ナワノビ・・・ですか?

 

所長:登記されている面積よりも実際の面積の方が多い場合を、「縄伸び」と言い、逆に実際の面積が少ない場合を「縄縮み」っていうんだよ。

 

西田:「登記されている面積が正しい」のではないんですか?

 

所長:中学の日本史などで習った、明治時代に行われた「地租改正」や豊臣秀吉が行ったといわれる「太閣検地」を覚えているかい?

 

祐子:う〜ん、なんとなく覚えています。

 

所長:「太閣検地」で行われた土地の調査の影響がいまだにある、と言ってしまうと言い過ぎかもしれないが、実は明治時代に行われた「地租改正」で作成された図面が、いまだに法務局に備え付けられている、「公図」(地図に準ずる図面)のかなりの部分を占めているようだよ。

 

西田:そうなんですか?

 

祐子:それでは、「登記されている面積が正しい。」とは言い切れないんですね!?

 

所長:そうなんだ。登記簿に「実際の面積が記載されている」とは限らないことになるね。

法務局に「地積測量図」が保存されているケースも

西田:となると、今日見てきた評価対象地の面積は・・・。

 

所長:「財産評価基本通達8」によると「地積は、課税時期における実際の面積による。」と書かれている。

 

西田:登記の面積よりも、僕が測った面積の方が正解に近いってことですか?となると、相続財産である土地の評価を行う場合は、正確な測量を行わなければならないということですか?

 

所長:費用の問題もあり、すべての土地の測量を行うことは現実的ではないだろうね。少なくとも、建物が建っている土地、いわゆる「宅地」の場合、その建物を建てる時に簡易測量や実地測量を行っている場合が多い。また、売買で取得した土地の場合は、売買の際に測量を行っている場合があるので、相続人に測量図の保管があるか、必ず確認する必要があるね。

 

西田:捨てちゃってる場合や、紛失している場合はどうするんですか?

 

所長:法務局に「地積測量図」が提出・保存されているケースもあるので、それを入手して参考とすることになるね。

 

祐子:それもない場合はどうしたらいいんでしょう?

 

所長:市区町村や道路を管理している役所に行くと、道路境界に関する図面や水道管などの埋設に関する図面などが備え付けられていて、閲覧できる場合があるんだ。それらを参考としながら、今日の西田君のように、現地で簡易測量を我々が行い、その面積を採用することになるね。

 

祐子:少なくとも、明治時代やその前の数値よりは正確ですね。

 

西田:だから会計事務所なのに、うちの事務所にメジャーが置いてあるんですね!やっとその理由がわかりました。

土地評価に係る 現地調査の重要ポイント

土地評価に係る 現地調査の重要ポイント

吉野 広之進

税務研究会出版局

土地の評価は千差万別です。評価してみたら、結果的に同額になる場合はありますが、すべての土地はそれぞれ違うものなのです。それだけに、土地の現地確認は、重要になってきます。「その土地が内包している問題点や特殊事情な…

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