自宅と貸地は長男に遺したいが・・・
<事例>
豊中市在住の鈴木さん(79歳)は、妻に先立たれ、長男、長女、次女の4人で暮らしてきました。長女、次女は結婚して独立し、鈴木さんは長男と2人で暮らしています。長男には軽度の知的障がいがあり、人に騙されたりしないか、将来の彼の生活を不安視しています。財産は住宅と貸地(年間地代100万円)、それに預金がありますが、相続税はかからないと思います。
結婚をしている姉妹に支えてもらいながら、自宅と貸地は長男に遺したいと考えています。
[図表1]
<問題点>
軽度の知的障がいがある長男の行く末を案じる対策で、民事信託を活用することが可能です。もちろん口頭や遺言で、長男のこれからの生活を姉妹にお願いしておくこともできますが、姉妹の負担や揉めごとに巻き込まれる心配も皆無ではありません。子供達が支え合いながら、先ずは長男の生活の安定を考え、最終的には、姉妹に財産が相続されることが理想と言えます。鈴木さんの存命中に財産が受託者に移転するために、遺留分で争うこともなく、子供達の相続争いも回避することができます。
[図表2]
共同受託者として姉妹が財産を管理し、長男を支える
<解決策>
①自宅と貸地を信託財産とし、長男の死後は、姉妹に受益権が順番に移転する民事信託を活用します。
②受託者は、姉妹が「共同受託者」として、2人で財産を管理し、長男を支えていきます。
③長男の身上の監護をする成年後見人を姉妹から選任します。
④成年後見制度と信託(不動産管理)の両方の制度を使い分けることにします。
⑤長男が死亡した場合には、信託は終了することとし、予め帰属権利者として定められた姉妹が、信託財産を相続します。
⑥不動産が信託された場合、委託者(鈴木さん)の所有権は、受託者(姉妹)の名義に移転し、同時に信託財産である旨の登記を行います。したがって、信託の目的に沿わない形で信託財産を担保に使ったり、処分したりすることはできません。
<税金の取扱い>
①鈴木さんが死亡すると、第二次受益者である長男に相続税が課税されます。
②長男が死亡すると、第三次受益者となる姉妹に相続税が発生します。
③小規模宅地の特例は、税法上においては、信託財産を直接所有しているものとみなし、要件に該当するのであれば特例を受けることができます。
④信託が終了すると、受託者から信託財産の帰属権利者に名義変更が行われ、信託終了時の受益者と帰属権利者が同一の場合には課税は生じません。ただし、所有権移転の登録免許税(相続登記)がかかります。